見もの・読みもの日記

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三浦半島の運慶仏巡り:浄楽寺、満願寺

2024-03-03 22:18:49 | 行ったもの(美術館・見仏)

 数週間前に3月のカレンダーを見て、3月3日が日曜に当たっていることに気づいた。関東在住の仏像ファンにとって、3月3日といえば、三浦半島・芦名にある浄楽寺のご開帳日である。私は20年くらい前に逗子に住んでいたこともあり、浄楽寺の収蔵庫改修のクラウドファンディングに寄付したご縁もあるので、久しぶりに行ってみたくなった。逗子駅から浄楽寺までは京急バスに乗る。時刻表では20~30分だったが、混雑の影響で倍くらいの時間がかかった。

金剛山勝長寿院大御堂 浄楽寺(横須賀市芦名)

 揃いの法被(抱き茗荷紋?)のおじさんたちが参拝客の車を誘導していたが「こっちは満杯です」「この先の駐車場なら、1、2台入れるかも」と大変そうだった。門前には露店やキッチンカーが並び、魚や野菜の市も出て大賑わい。まずは本堂に参拝する。江戸時代の小ぶりな阿弥陀三尊像が安置されており、背後の壁の裏側に描かれた伝・戸川雪貢筆『釈迦三尊図』も間近に見ることができた。2022年夏の横須賀美術館『運慶 鎌倉幕府と三浦一族』にも出陳されていたことを思い出した。

 本堂右手の坂を上がって本堂の裏にまわると、運慶仏像5体(阿弥陀三尊、毘沙門天、不動明王)を収めた収蔵庫が立っている。2018年のクラウドファンディングで建設されたものである。

 文化庁からの指導ということで、拝観者は氏名等を記帳し、15~20人ずつ区切って入庫を許された。扉を閉め、しばらくすると「では、灯りを消します」との案内。照明が全て消され(お燈明?だけがわずかに残る)真っ暗闇になる。はじめは本当に何も見えないが、次第に暗闇の中に阿弥陀如来の姿がぼんやり浮かび上がってくるような気がする(気がするだけかもしれない)。なかなか貴重な体験だった。

 ご開帳限定バージョンの「阿弥陀三尊」のご朱印をいただき、特製「運慶饅頭」をお土産に買った。収蔵庫拝観・限定御朱印・運慶饅頭がそれぞれ300円、六佛焼香巡り(参拝用の焼香をいただける)も300円と、全体に庶民的な運営でありがたかった。

満願寺(横須賀市岩戸)

 今年はもう1ヶ所、行ってみたいお寺があった。2022年の横須賀美術館および金沢文庫の『運慶 鎌倉幕府と三浦一族』で久しぶりに拝見して、惚れ惚れした運慶仏を有する満願寺さんである。浄楽寺には2018年にも来ているのだが、満願寺は、たぶん30年近く前に一度訪ねたきりではないかと思う。Googleマップのおすすめ経路に従って、バスを乗り継ぎ、「岩戸町内会館」というバス停で下車した。さらにGoogleマップに従い、眩暈のするような高低差の石段を下りる。満願寺は、この隠れ里みたいな低地にあるのだ。

 満願寺に到着。お墓参りらしい人影がわずかにあったが、ひっそりしている。本堂の正面のガラス障子も閉ざされた状態。向かって右奥に収蔵庫があるのだが、これは、もしかして拝観させてもらえないかも…とドキドキしながら、近づいてみる。

 収蔵庫の扉には「拝観は予約制です」という貼り紙がしてあった。残念! しかし、金属製の重たい扉が半分開いているではないか。よく見ると、貼り紙の横に小さなポストイットが貼ってあって「本日拝観ご予約の方 只今外出していますが どうぞお参り下さい お帰りに消灯、外扉を閉めて下さると助ります。」と読みやすい字で書かれていた。

 おそるおそる内側のガラス障子に手をかけると、するすると開いた。どこのどなたか知らないが、この日の拝観を予約してくださった方のおかげで、私も拝観させていただくことができてしまった。収蔵庫内には、観音菩薩・地蔵菩薩・不動明王・毘沙門天の4体が並ぶ。この4体は確実に運慶作とは言い難いが、工房の関与が考えられているもの。私は特に、猛々しい面構えの観音菩薩立像が大好きなのだ。今日の久しぶりの対面は、推しの観音さまに招き入れられたようで嬉しかった。この収蔵庫は、昨年2023年、50年ぶりの改修工事が行われたそうである。地元の株式会社大神さん、ありがとうございます。拝観料とお布施は、賽銭箱に投入して立ち去ることにした。

 なお、バスで満願寺へ向かう途中、三浦大介義明を開基する満昌寺の前を通った。今回は浄楽寺と満願寺だけの予定だったけれど、次に機会があったら、もう少し行先を増やして計画を立ててみたい。

 浄楽寺で買った「運慶饅頭」は明日のおやつのお楽しみ。

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