見もの・読みもの日記

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表具の楽しみも一緒に/紙の装飾(根津美術館)

2017-06-30 23:19:54 | 行ったもの(美術館・見仏)
根津美術館 企画展『はじめての古美術鑑賞 紙の装飾』(2017年5月25日〜7月2日)

 昨年から始まった「はじめての古美術鑑賞」シリーズ。本展は、「読めない」という理由から敬遠されがちな書の作品にアプローチする一つの方法として、書を書くための紙、すなわち料紙(りょうし)の装飾に注目する、と開催趣旨にいう。そうかあ、私も正直、書(古筆)は読めないのだけど、書のかたちそのものが美しいと思うので、見るのは好きだ。料紙は脇役でいいんじゃないかと少し納得できない気持ちを抱きながら行ってみた。

 「雲母(きら)」「染め」「金銀」など、いくつかの装飾技法ごとに作品を集めているのだが、驚いたのは冒頭に展示されていた小島切。ある角度から見ると、雲母砂子(きらすなご)が名前のとおり、キラキラと星空のように見える。はじめて気がついた! この展覧会では「雲母」の12作品には、全て小さな個別照明をセットしていて、今まで見たことのある作品が、全く知らなかった別の表情を見せてくれる。すごい。光悦の『壬二集和歌色紙』は、雲母で描かれた大きな桐の葉が、3Dのように浮き上がって見えた。

 展覧会の注目ポイントは「料紙」なのだが、軸物が並んだ結果、私は表具も楽しませてもらった。尾形切の縦縞の裂れ、涼しげでよかったなあ。伊予切は1枚目が水色、2枚目に薄いピンク色の料紙を継いだ断簡で、周りの表具が青地に赤い菊の花なのとよく合っていた。いつかこの「はじめての古美術鑑賞」シリーズで「表具を楽しむ」もやってほしい。

 「染め」では愛知切の「丁字吹き」というのが、色と同時に香りも楽しむとあって奥ゆかしかった。今城切は藤原教長の手跡で、やっぱり本当に好きな書だと、料紙も表具も目に入らなくなってしまう。本願寺本三十六人家集や平家納経は近代の模本(田中親美)の展示だったけれど、これはこれで制作当時の美しさが偲べていいと思う。

 展示室3(1階ホール奥)の仏教美術が久しぶりに入れ替わっていて驚いた。展示室5は「焼き締め陶」で、信楽、伊賀、備前など私の好きな系統の陶器がずらり揃っていて嬉しかった。「蹲(うずくまる)」みたいに、説明に振り仮名がふってあったのもよかった。信楽の「煎餅壺」というのがあって、え?煎餅を入れる容器?と思ったけど違うらしい(諸説あり)。展示室6「涼一味の茶」は、磁器や銅器の肌に涼を感じた。
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