見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

絵画と博物画の間/大野麥風展(東京ステーションギャラリー)

2013-08-29 22:42:54 | 行ったもの(美術館・見仏)
東京ステーションギャラリー 『大野麥風展「大日本魚類画集」と博物画にみる魚たち』(2013年7月27日~9月23日)

 東京に出張することになり、羽田に到着してから仕事まで、少し余裕があった。どこか時間をつぶせるところがないかな?と探しているうち、この展覧会を見つけた。

 大野麦風(1888-1976)の名前には、もちろん覚えがある。画家というより、博物画家としてだと思う。ネットで検索してみたら、荒俣宏さんが、古本屋の店頭で15年間も眺め続けた『大日本魚類画集』を、『帝都物語』がベストセラーになって印税が転がり込んできたので、ついに入手できる!と意気込んでいたら、他人に売れてしまった、というエピソードが出てきた(ほぼ日刊イトイ新聞)。たぶん私が麦風の名前を覚えた最初は、80年代の荒俣さんの著書だろう。

 しかし、博物画のつもりで見に行ったら、いろいろびっくりした。まず、代表作の『大日本魚類画集』が、水彩でも油彩でもなく「木版画」であるというのが信じられなかった。う、うそだろ!! 嘘ではなくて、ちゃんと版木もあり、原画と摺り見本と完成品を並べたコーナーもあるのだが、とにかくその「技術力」がすごい。

 また、麦風は、純粋に「科学のため」に活動した博物画家とは違って、白馬会・太平洋画会・光風会などに出品し、第1回帝国美術院展覧会にも入選した作家(芸術家)でもある。だから、その作品は、魚を魅力的に、美しく見せる「仕掛け」に満ちている。自由に姿態を変えながら、あたかも三次元の水槽を泳ぎ回る魚たち。どこか人間くさい表情(魚なのに)。水草、砂地など、逆巻く波涛など、効果的に描き添えられた背景。いや面白かった。見ているほうも水の底で、魚の一員になってしまったような、この季節にふさわしい好企画。図録を買って帰ろうかと思ったが、現物が素晴らしすぎて、断念した。
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