見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

目の修養/2011東美アートフェア

2011-10-18 23:13:33 | 行ったもの(美術館・見仏)
東京美術倶楽部 『東美アートフェア』(2011年10月14~16日)

 近代美術から古美術・茶道具・工芸まで、美術商114店による展示・販売会。2008年、2010年に続く三度目の訪問である。初回は、場違いなところに迷い込んだようで、オドオドしてしまったが、もう大丈夫。まっすぐ4階に上がり、ブースの並びを確認し、落ち着いて順番に覗いていく。

 店構え(品揃え)を見ただけで、あ、いつもの…と思うおなじみさんもいくつかできた。たとえば、中国陶磁器の浦上蒼穹堂。仏像・骨董のはせべやなど。万葉洞の今年の目玉は、桃山時代の初期洋風画『老人読書図』(伝・信方)だった。紙に岩絵具で描いている。「この後すぐ、サントリー美術館の展覧会に持っていくんですよー」と話していた店員さん。あ、昨年、『扇面京名所図』の説明をしていた方だ、と思い出した。サントリーの『南蛮美術の光と影』(10月26日~12月4日)に出るのか。まだ展示リストは公開されていないみたいだけれど。「サントリーが購入したんですか?」と聞いたら、「いや、そうじゃないです」とおっしゃっていた。なるほど。こうやって、美術商の店頭から出品される作品というのもあるんだな。

 ブース内に、昭和62年、板橋区立美術館刊行の『NAMBAN(南蛮)』という展覧会図録が置いてあって、同作品が掲載されているのを確かめることができる。その頃から、板橋区立美術館って、ユニークな企画をしていたんだなあ。白黒写真の多い、豪華とは言えない図録だが、欲しい。

 3階は茶道具が多い。私は、茶道具はざっと目線で追うだけにして、壁の書画は見逃さないよう気をつける。渡辺始興、酒井抱一、池大雅、富岡鉄斎など多し。どこのお店だったか、蘆雪の『鮭』は、荒巻鮭みたいな大きな鮭が画面いっぱい斜めに横切っている図で、面白かった。どこかの美術館で買わないかな。

 古美術・白水には、秀吉が天正15年に催した茶会で使用した茶入と書状が展示されていた。茶会の客に招かれた足利義昭(もろまち殿)に仕えた槇嶋(真木嶋)昭光の子孫の家から、最近出てきたと、これも店員さんが語っていた。こういう話を聞けるのが、このアートフェアの面白さ。

 会場には、スーツ姿の若い店舗関係者が意外と多くて、相互に店頭を訪ねて、勉強しあうことを奨励する雰囲気が面白かった。「いいよ、触っても。あんたら若い者にこの業界を支えてもらわないと」みたいな声をかけているおじさん店主もいた。一方で、お爺ちゃんどうし、声高に、昔は金が入れば気前よく買い、金に困れば一気に売り払うお得意さんがいたものだ、みたいな話をしているところも見受けた。

 今年は、2階の座敷を使っていないので(昨年の東美特別展では展示会場になっていた)、最後は1階。なんとなく、1階の商品が、いちばん高そうな気がする。奈良の赤井南明堂とか。いや、値段なんてどうでもよくて、品物を拝見させていただくだけで、幸せになる。売りものの花瓶に茶花が活けてあったり、季節の木の実が並べてあったりするのもよい。

 勤め人のうちに、どれだけ稼げるか分からないけど、本当に年を取ったら、本も電子機器も要らないし、旅行も行かなくていいから、好きな骨董を売り買いして、眺め暮したいとひそかに思っている。今はまだ、そのときに備えて、目を確かにする修養期間。
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