「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

「AXIOM80愛好家三人組の例会」~第4回~

2015年08月25日 | オーディオ談義

およそ1か月に1回のペースで開催している標記の例会だが、早いものでもう4回目を迎えた。

「グッドマンのAXIOM80って何?」という少数派の悲哀をかこつ中、せめて同好の士が集まって「お互いに励まし合おう」、「この気難しいユニットをもっと上手く鳴らすノウハウを探ろう」という趣旨で始めたものだが、それぞれに所有する機器がCD機器からプリアンプ、パワーアンプまで何から何まで違うことから、(同じユニットなのに)出てくる音も千差万別で実践的な研究の場としてこれ以上のものはないようで、これは3名ともまったく同じ気持ちだと思う。

そして開催するたびに何かしら新しい発見があるのでいつも胸がワクワクする。

もちろん、そこはオーディオマニアの常で、ある程度の競争意識が底流に横たわっているのは言うまでもない。お互いに切磋琢磨する中で少しでも抜きん出てビックリするような音を出して驚かしてやろうという山っ気がまったく無いと言ったらウソになる。少なくとも自分の場合はそう(笑)。

今回はKさん宅(福岡)での開催なので焦点は豊富な古典管を使った真空管アンプの豪勢な競演がハイライトである。Kさんのシステムの持ち味は1920年代製造の名管が続々と登場するところにあるのだから真空管マニアにはこたえられない。

オーディオマニアのなかには極めて耳がよく、音にもうるさい方をよく見かけるが、1920年代前後の古典管の研究をされていない方が意外に多いことに気付かされる。この年代は「いい音がする真空管の宝庫」なのに実に勿体ない・・・。

「WE300Bを使ってさえいれば大丈夫」という盲信と風潮がその原因だと秘かに睨んでいるのだが、一方では古典管の真価を知らない方が多い分、オークションでの値が上がらないので大いに助かる面もあって当方としてはむしろ現状維持のままの方がヨロシ。

ま、ひところの自分がそうだったのであまり偉そうなことは言えないのだが(笑)。           

          

Kさん愛用の真空管アンプはたしか10台以上と伺っているがいずれも1920年代~40年代の古典管を使ったものばかり。

たとえば画像の「AXIOM80」の上に何気なしに載っているアンプは「2A3シングル」だが、その2A3は「一枚プレート」もので現在のオークション相場ではペアで15万円ほどもする稀少管。

それなのに1か月に1度ほどの出番だそうで勿体ない限り。「歳がいくと2A3の出番がきっと多くなるはずです。」と、仰るKさんだが、控え目で奥床しい鳴り方をする「2A3」の真価は知る人ぞ知る。

今回聴かせていただいたアンプは「50シングル」「VT52シングル」「VT25シングル」の3台で、これらを「AXIOM80」とラウザーの「PM-6」の2系統のSPユニットと組み合わせての試聴だった。

            

最初に聴かせていただいたのは「50シングル」と「AXIOM80」との組み合わせだったが、途中から50(ST管)を250(ナス管)に替えたとたんに音の彫が深くなって歴然とした差が出てくる。「やっぱり真空管はナス管に限りますなあ」と一同慨嘆したことだった。

多くの古典管は最初はナス型で製造され、人気が出るにつれて哀しいことに大量生産向きのST型へと変遷していく。製造する手間のかけ方が違うので同じ型番の場合、音質面でST型がナス型を凌駕することはあり得ないのも頷ける。

次に聴かせていただいたのは「VT52シングル」と「PM-6」の組み合わせだが、とても16センチ口径のユニットとは思えないような朗々たる音が鳴り響いた。

250アンプとAXIOM80の組み合わせの時もそうだったが、アンプが完全にスピーカーをコントロール下においている感があって実に小気味よい歯切れのいい低音が躍動する。

Kさん持論の「低音は量ではなくスピード感を楽しむ」を地でいっていて、我が家ではとても出せそうにない音。

ふと、同じ「AXIOM80」を愛好する者同士でありながら、(根っこは一緒だとしても)それぞれの音に求める個性は違っていて「三者三様だなあ」という思いに囚われた。

Kさんは何といっても音のスピード感重視派、Sさんは高音域方向へ伸びる倍音をとても大事にされる方、そして自分はといえば丁度両者の中間という位置づけかもねえ(笑)。

「VT52」アンプの次に「VT25」アンプを聴かせてもらったが、ようやく自分が大好きなレイセオン「210」(VT25同等管)のご登場。

              

1920年代当時の真空管は画像のとおりとても大きな箱の中に何重もの綿にくるまれて梱包されている。今どきこんな丁寧な梱包は見たことがないが、いかに当時の真空管が貴重品だったかが伺われる。

「210」の音は自分がこれまでいろいろ聴かせてもらった古典管の中ではベストの存在だと思うが、この球のアンプを持っていないとは何たるオーディオ人生の皮肉かと憾みたくなるが、オーディオの世界では常に夢と憧れの存在としての「青い鳥」が必要な気もするところ。この辺は分かる人には分かるはず(笑)。

ここでようやく持参したCD盤「魔笛」(サヴァリッシュ指揮)を聴かせてもらった。エンディングに近い有名な「パパパ」の部分である。魔笛を好まれる方は、まずいないので「10分間の辛抱ですから~」と、恐縮しながらの申し出だった。

部屋全体がまるで登場人物が舞台上を元気に飛び回っているかのような躍動感に包まれたのには驚いた。

「アレッ、魔笛ってもっと敷居が高いオペラかと思ってましたが結構親しみやすいんですね!」とKさん。

「そうなんですよ~。軽妙洒脱で非常に美しいメロディがぎっしり詰まったオペラですが、食わず嫌いの方が多いみたいです。」と、自分。

いい音を聴かされると時計の針の回りが早い。5時間ほどの試聴を終えて辞去することにしたが、我が家のシステムとの違い、今後の展望などに思いを馳せながらの道中だったので退屈しなかった。途中で覆面パトに捕まった車を2台見かけたが(スピード取締りの)車種がチェックできたので思わぬ収穫(笑)。

翌日(23日)になってKさんに昨日の試聴の謝辞を述べたところ「いやあ、大発見でした。魔笛があんなに親しみやすいオペラとは想像してませんでした。実を言いますと、オペラといえばついイタリアオペラを連想してしまい、どうもあの仰々しさがイマイチでした。テナーのペーター・シュライヤーは大好きな歌手でCD盤を探しているところでしたよ。」

「いやあ、それはうれしいですね。魔笛にはモーツァルトの音楽のすべてが詰まっています。次回の例会は我が家で開催(9月中旬予定)ですのでその際に魔笛をお貸ししましょう。シュライヤーは、サヴァリッシュ盤以外にもデービス盤、ズイトナー盤に登場しているはずです。」

もともと9年前に始めたこのブログは「魔笛」ファンを一人でも増やすことが目的だったのだから大願成就に向けて一歩前進~(笑)。


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