先日(11日)、信じられない安値で落札したアンペレックスの真空管「6922」だが、これは6DJ8の高信頼管でありれっきとした「メイド・イン・HOLLAND」製。
出品者の気が変わらないうちに(笑)、すぐに指定の口座に代金を振り込むと、発送が13日、我が家への到着は15日(土)の日程となった。「小人閑居して不善を為す」わけでもないが、タイムラグがあるとつい余計なことを考えてしまう。
とうとう良き相談相手のオーディオ仲間のKさん(福岡)にご注進に及んだ。
「大丈夫でしょうかね?悪質な〇〇製だと、管壁の印刷までそっくりコピーすると聞いたことがありますし、写真で見る限り12本とも白箱というのも気になります。何だか悪徳商法に引っかったのではないでしょうか。そもそも、まっさらの新品としてデッドストックされていた経緯がまったくわかりませんし、ちょっと話がうますぎる気がして不安なのですが・・。」
すると、次のような返事があった。
「〇〇製だとプレートに不自然な艶がありますが、写真でみる限り大丈夫です。実は自分も以前そっくり同じ赤字印刷のものを4本持っていたのですが、カウンターポイントのプリアンプを使っている連中に貸しているうちに行方不明になってしまいました。それにしても随分安い価格(1本当たり2650円)で手に入れましたね。出品者は早くお金が欲しかったのでしょう。稀少品ですから逐次2本セットでオークションに出せば軽く1万円は下らない値段で売れたと思いますよ。」
疑念が晴れてひとまず安心したが、やはり実際に聴いてみないとね。我が家のシステムとの相性もあるし~(笑)。
昨日(15日)は朝早くから首を長くして待つことしばし。10時ごろに「宅配です」と玄関のチャイムがピンポ~ン。着きました!
さっそくプリアンプに挿し込んでいた「アンペレックスのPQ(メイド・イン・USA)」(以下「PQ」)と入れ替えて祈るような気持ちで試聴してみた。
「ウ~ン、素晴らしい!何という自然な響きなのだろう。」あのPQさえもがまったく色褪せたように聴こえるから不思議(笑)。
これまで沢山の真空管を試聴してきたが、経験上、自分なりに「本物と“まがい物”」の差を瞬時に聞き分ける峻別方法を一つだけ持っている。
それは「音の重心が下がるか否か」。本物の場合は音の重心がぐっと下がって、変に上ずったところがない。これはエージング以前の問題としてどのテストの場合でも通用する。
今回の場合は、音の重心が下がるというよりも、周波数特性が完璧にフラットの状態のような印象を受けた。出過ぎたところもないし、引っ込んだところもない。
そういえば、この音はオランダの「フィリップス・レーベル」の音にそっくりだ!
レコードもそうだが、CDもレーベルによって随分音の傾向が異なるのはマニアならご承知のことだろう。いろんなレーベルを聴いてきた中で個人的には、透明感、レンジの広さ、クセのなさなどから「フィリップス・レーベル」に指を屈すると思っている。
内田光子さんの録音はすべてフィリップスだし、いまだにベスト盤として愛聴している昨年4月に亡くなったコリン・デイヴィス指揮の「魔笛」がフィリップス・レーベルだった。
大喜びでKさんに電話してみた。
「いやあ、想像以上にいい音で驚きましたよ!これまで6DJ8を何種類も試してきましたが、今回のメイド・イン・HOLLANDがベスト中のベストです。おかげさまでいい買い物ができました。」
「そうでしょうね。10年に一度あるかないかの出物だと思いますよ。最初に電話でお伺いしたときに、正直言って“失敗った、自分も入札に参加したかったのに”と思いました。松下の7308もいいのですが、最高域にちょっとキツイところがありますからね~。エージングをあと1か月ほど重ねると、もっと良くなりますよ。実はようやく仕事が一段落しましたのでお伺いするつもりでしたが、ここ2~3日の大雪のせいで断念したところです。天候がよくなったら、またご連絡します。」
今回の落札はまったくの僥倖だったが、自分の口から言うのもおかしいが日頃の努力が実を結んだともいえるかもしれない。実を言うと、ここ1年ほどの間に「6DJ8」系をしこたま仕入れて、折にふれテストを繰り返してきた経緯がある。
この際、自分用の備忘録として整理しておくと、
「6DJ8」(ECC88)
ザイレックス、松下、東芝、シルヴァニア、ロシア、テレフンケン、RCA 計22本
「6922」 フィリップス・USA 計6本 「M3624」 東芝 計2本 「7308」 テスラ、松下(NHK仕様) 計9本
合計すると39本の真空管を試してきたことになる。そして今回のベスト管12本を加えると総数51本。
さあ、不要になった真空管をどうやって処理していこうかな(笑)。