真空管アンプを愛用するようになってから随分久しい。知らず知らずのうちに5セット溜まってしまったが、そのうち4セットが現在稼働中で、残りの1セットはどの真空管アンプが故障してもいいようにスペアとして待機中。
このスペアになっているアンプを、たまには電源を入れて可愛がってあげようと先日スイッチをオンしたところ左チャンネルからブーンというハム音がする。アレッ、おかしいなぁ。
こういう時の故障はまずハンダ付けの接触不良を疑った方がいいのでアンプをひっくり返して点検するもまったく異常なし。こうなると、素人にはまるでお手上げの状態で専門家のお出まし、お出まし~。
頼みの綱の奈良のMさんに連絡をとってみたところ、「別のアンプの修繕を請け負っているのでしばらく待ってください」とのことで、それから1か月ほどしてようやく送付の許可が出た。
我が家で一番図体が大きくて重たいアンプなので梱包するのにてこずったが、ヤマトさんに取りに来てもらったので楽だった。関東方面と違って別府から奈良へは翌日配達なので助かる。
そして、点検してもらったところ何と修繕個所が出るわ出るわ(笑)。
電解コンデンサーの液漏れや出力管へのカップリングコンデンサーの液漏れ、手薄なヒート対策、そしてパンク寸前状態のブロックコンデンサー。
そして、ついにハム音の原因が判明して、次のようなメールがMさんから来た。
「ありがたい、ありがたい、情報でした!!
>ラックにこのアンプを納める時に、ちょっと強引に収めたのですが、それから急にハム音が出るようになった気がします。
>もしかしてラックに収める時に、指が内部に入って部品を押し付け異常をきたした可能性も捨てきれません。
〇〇さん(自分のこと)の、このメールがなければ、真空管ソケットを交換しようとは思わなかったことです。ソケットを取り外して、診ましたところ絶縁チューブが破れてカソードとヒーター片側が接触事故を起こしていました。
原因が発見出来て今夜の晩酌は、旨い、美味い晩酌となります。」
先日のブログにも記したようにオーディオにとって磁界対策と振動対策は非常に重要だが、こればかりは目に見えないだけに実に厄介な代物。そこで、せめて、アンプのシャーシが鉄製の場合には常時、底板を取っ払って磁界がこもらないようにしていたわけだが、今回はそれが裏目に出てしまった。
しかし、このたびは「災い転じて福」となったのは明らかで、他の修繕個所が次々に見つかってよかった。購入してもう20年以上にもなるので部品の劣化があるのは当たり前でいずれ大きな故障に繋がったことだろう。
そして、一昨日(6日)にMさんから次のようなメールが到着。
「修理が完了して試聴してみたところピアノがまさにグランドピアノの鳴りっぷりには驚きました。音の良さに、早く〇〇さんに聴いていただきたくなり、いま出荷しました。明日7日の時間指定14時から16時にしましたが、遅れるかも知れませんとのことでした。アンプを持つ位置は左右アウトプット・トランスの真横がよろしいと思います。話半分で、あまり期待せずにパワーオン願います。」
こういうメールをいただくと、もう胸がワクワク。そんなに”いい”と仰るなら、我が家のエースである「AXIOM80」用のアンプとして使ってみようと決意した。
そして、朝から首を長くして待つことしばし、ようやく14時30分ごろに到着。
画像右側が戻ってきた「VV52BX」アンプで、左のPX25・1号機と比べると、その大きさが分かっていただけよう。
さっそく接続して聴いてみると明らかに低音域との繋がりが良くなっている。音がすごく豊かになって全体の雰囲気も極上でクラシックを鑑賞するのにはもってこい。思わず”万歳”と叫んだ。
「AXIOM80」の理想の音は「繊細で、ふっくらした艶やかな響き」とされているが、「繊細と艶やか」感はともかく、「ふっくら」感だけは銘球とされるWE300BやPX25をもってしても、どうしても出せなかったが、このVV52BXでようやく目的を達した。
この音ならオーディオをいっさい意識せずに音楽に浸れそうだ。
試聴盤はレコード盤からCDにコピーしてもらったビーチャム指揮の「ペールギュント」。
この「ペールギュント」(グリーク作曲)は最新録音のヤルヴィ指揮のものを持っているが若い時から聴きなれてきたビーチャム盤でないとどうも落ち着かない。カップリングは「パガニーニの主題による狂詩曲」(ラフマニノフ作曲)で、凄くロマンティックなメロディが含まれていてこれもフリッツ・ライナー指揮でルービンシュタイン演奏が一番好きなのでこのCD盤は宝物的存在。
ほかにもコレルリの合奏協奏曲(イ・ムジチ:フェリックス・アーヨ)、ミサ・ソレムニス(クレンペラー指揮)をCD化してもらった。我が家にはもう「レコードプレイヤー」がないのでほんとうにありがたいことである。