☆ 「確率に強くなる」(2010.1、Newton別冊)
ブログのネタ探しに「何か面白い記事はないものか」と、上記の本にザット目を通していたらちょっと目を引いたのが確率論からみた「ベストな結婚相手の選び方」。
「どういう職業に就くか」と並んで「結婚相手の選択」は人生を大きく左右する一大事と言ってもいいくらい大切な事柄。
「一生の不作」という言葉もあるくらいで、決めるときはどんなに慎重であっても構わないと思うが、やはり結婚してみなくては相手のことがよく分からない部分が必ずあるのが厳しい現実。
つまりミステリアスな領域を残しての一種の「賭け」というわけだが、もちろん反論もあって、熱烈な恋愛の末に結ばれたカップルなどからは神聖な結婚を「”賭け”呼ばわりするなんて不謹慎な」と怒られそうだが、まあ一般論として聞いてほしい。
「賭け」と「確率論」は切っても切れない仲だが、「ベストな結婚相手の選び方」についてユニークな一つの指針を紹介してみよう。
今、交際している人と結婚すべきかどうか迷っている人、あるいはそういった経験をしたことがある人は多いのではないだろうか?もしかすると今の交際相手よりももっとよい人が現れるかもしれない、逆に現われないかもしれない・・・。
貴方はたいへん魅力的なので一生のうちに10人もの人と交際するチャンスがあるとしよう。ただし、一度別れた人とは二度と会うことはできないとする。
そして10人の中に最良の結婚相手Aさんがいるとする。しかし、Aさんが何番目に現れるかはわからない。
仮に1人目の交際相手と結婚した場合、それがAさんである確率は1/10ととても低い。だからといって10番目まで待って結婚したとしてもAさんと結婚できる確率は同じく1/10。
では、どうすればAさんと結婚できる可能性が最も高くなるだろうか?
確率論で計算すると、この場合3.7人と交際して別れたあとにこれまでの3.7人よりも誰よりも魅力的な人が現われた時点で結婚するのが最良の戦略とされる。
この戦略にしたがえばAさんと結婚できる確率は最大となり、その値は37%。当然、人間相手なので3.7人ということはありえず3人~4人目以降となる。
確率の計算結果は次のとおり。
別れる人:確率
0人:10% 1人:28.3% 2人:36.6% 3人:39.9% 4人:39.8%
5人:37.3% 6人:32.7% 7人:26.5% 8人:18.9% 9人:10%
つまり、2人と別れたあとにAさんと結婚できる確率は37%、3人と別れたあとだと40%、4人でも微差で40%、5人だと37%、以下段々と下がっていく。
と、まあ、以上が理想の結婚相手を確率論で選択するやり方なのだが、どう考えてもこれは現実論からするとちょっと無理。
たとえば女性の場合は交際の数が増えるほど不利な側面があって成談の可能性は低くなる!
また、10人の交際相手を仮に5人とした場合も、理想の相手と結ばれる確率は最初と最後〔結果的に)が一番悪いが、実際には最初の機会で結婚を決めるケースが意外と多いように思う。確率としては一番悪いのに~。
と、いうわけでやっぱり結婚は確率論で片付く問題ではなく「この人とどうしても一緒になりたい、ミスったとしても後悔しない!」と覚悟を決めてするのが一番常識的な線のような気がするが、どうだろうか。
なお、ほかにも「ギャンブルと確率」の項目があり、競馬や競艇の期待値〔還元金)は宝くじやロトの45%~50%に比べて75%なので有利だそう。
取り分け、期待値が100%を超える可能性のあるのが競輪の「チャリロト」。配当金の上限額が12億円に設定されているのでキャリーオーバーが溜まっていくとたいへんなことに。
☆ 「眠れる森の惨劇」(H12,ルース・レンデル)
イギリスにはどうしてこうも優れた女性推理作家が多いのだろうか。あの「ミステリーの女王」アガサ・クリスティ以来の伝統だろうが、ミネット・ウォルターズ、P.D.ジェイムス、そしてこのルース・レンデル。いずれも粘っこい文章を書く。
以前、パトリシア・コーンウェル(アメリカ)の検死官シリーズの1冊を読んでサッパリだったので一層この感がする。
この「眠れる森の惨劇」は銀行強盗による殺人事件と、うっそうと茂った森の奥の一家惨殺事件とのつながりと真犯人を追い詰める優秀な主任警部の物語。「ウェクスフォード警部シリーズの1冊」。
手放しでというわけにはいかないが、秀作という表現がピッタリで読み始めてみると本が手離せなくて、2日がかりで読み上げた。
本書の特徴は、長い物語、深い人間観察、情景描写が実に細かい、登場人物の造形が優れて独創的といったところにあるが、展開中、いたるところに人生の警句めいたものがシェイクスピアなどの古典からの引用とともに散りばめられ、作者の深い教養がしのばれる。
これはミネット・ウォルターズをはじめイギリス女流作家の常套手段みたいなものでいつも感心させられる。このことによって謎解きとは関係なしにストーリーにたいへん深みが出てくる。やはりミステリーといっても文学的な香りがしないと~。
ただし、登場人物が多くてそれぞれ覚えるのがたいへん。しょっちゅう、巻頭に戻って「主な登場人物」の紹介に戻らなければならないし、真犯人の見当も途中から段々ついてくる。
結局、最初の殺人現場の状況に大きなヒントが隠されていたわけだがミステリーの約束事にしたがって紹介はここまでに~。