「脈は健康のバロメーター。血圧と同じように、日頃からチェックしておくといいですよ」とは杏林大の池田隆徳・准教授(循環器内科)。
2008年9月28日(日)付け朝日新聞の日曜版は、日陰者の存在だが人間の生命にとって欠くことのできない大切な「脈」についての特集だった。
取り分け「元気の秘訣~適度なドキドキは長生きにつながる~」とあったのが思わず興味を引いた。
これは、あくまでも素人考えだが心臓の鼓動は生涯を通じて打つ数が大体限られており恒常的にドキドキの機会が多ければ多いほど心臓にとって負担となり寿命に悪影響を及ぼす要因の一つになるのではとこれまで考えてきたところ。
根拠の一つとして挙げられるのがおよそ2年前のブログ(「健康コーナー」)で紹介した芥川賞受賞作家の玄侑宗久(僧侶:げんゆうそうきゅう)氏のエッセイで「僧侶が長生きする理由」。
同氏はその理由をいささか揶揄気味に4点ほど掲げてあって、そのうちの一つが僧侶の大事な日課となっているお経、座禅などでこれらは呼吸数が非常に少なくて済むため長生きしているというものだった。
これは中公新書「ゾウの時間 ネズミの時間」によりあらゆる動物は5億回の呼吸を終えると大体死んでしまうとの内容を踏まえたもの。
心拍数と呼吸数とではストレートに比較できないのはもちろんだが一般的に心拍数が高まるとそれに応じて呼吸も浅くしかも早くなり回数が増えるので相関関係があると思うのが自然だろう。
しかし、この朝日新聞の記事によると「一日のうちに程よく心拍数がドキドキと変化する生活は、刺激がない生活よりもむしろ長生きに影響するらしいことが医学的にも分かっている。ほどよいドキドキを積み重ねていくにはどんなコツがあるのだろうか。」と、むしろドキドキを肯定的に捉えている点が面白い。以下要約してみた。
心臓のポンプがドクンと血液を送り出したとき脈は生じる。脈拍数は心拍数と一緒。拍動のリズムは自律神経の影響を受けながら心臓が自立的に刻んでいる。健康な大人は平均で毎分50~100。
池田准教授によると「朝起きたとき脈が極端に早いなどいつもと違っていたらカゼのひき始めか、体調を崩しかけているのかもしれないので気をつけて欲しい」。
緊張したり運動したりした時など生理的にも心拍数は上がるが、毎日ほどよくドキドキするには運動が手っ取り早い。その健康的な心拍数の目安だが「じわっと汗をかき、無理なく続けられる強さの運動がいい。」
そもそも体に酸素を取り込む心肺の能力と健康には科学的にも関係が認められている。取り込み能力が高いほど持久力があり健康だといえる。「健康的な持久力を保つには最大酸素摂取量の50~75%の強さの運動を20分以上、週3回以上が目標。
そうした適切な負荷になるような目標心拍数について、スポーツ医学に詳しい順天堂大の河合祥雄教授(循環器内科)によると拍動の限界値は(最大心拍数)は「220マイナス年齢」で表わされる。
これと安静時の心拍数との差に目標とする酸素摂取量の係数をかけて算出すると
40歳代は120/1分間、以下50歳代は115、60歳代は110、70歳代は105が目安といったところ。
ただし、同じドキドキでも突然の動悸や不規則な脈を感じたら症状を記録して循環器の専門医を受診した方がいい。
記録のポイントは☆時間帯 ☆脈拍数 ☆持続時間 ☆冷や汗、めまいなど不快症状の有無などといったところ。
悪い場合の特徴としては☆息切れ、だるさ、めまい、冷や汗、痛みなどの不快症状が伴う☆急に始まり、急に終わる☆30秒以上続くといったものがあるという。
以上のような内容だったが、結局「ほどよいドキドキ」には運動が一番とのありふれた結論で「竜頭蛇尾」、そう目新しいものではなかった。
しかし、私見だが「運動による”ドキドキ”」と「緊張感に伴う”ハラハラドキドキ”」とでは同じ”ドキドキ”でもまったく違うように思える、後者はいきなり来ることがあるし持続時間も結構長いので心臓への負担は遥かに大きくこの二つは決して同列に論じられないと思うのだが。
いずれにしろ、自分の場合現在では後者とはまったく縁がない生活となっているが、これは裏返せば普段、いかに緊張と刺激のない生活を送っているかとも言えるのだが、「何だか淋しいようでもあり、懐かしいようでもある」というのが正直な感想で人間というものは何と勝手な生き物なんだろうか。