「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

読書コーナー~断末魔の中国~

2007年12月27日 | 読書コーナー

以前にも使った表現のように思うが、21世紀はユーラシア(ユーロとアジアの合成語)大陸の時代だといわれている。資源大国ロシア、IT大国インド、人口大国中国の近年の躍進振りをみればうなづける話。

このうち特に、隣の大国中国は一衣帯水の地とまではいかないが地理的にも近いことから古来、政治制度、文化面などで多大の影響を受けてきた国。

太平洋戦争への道の発端となった満州事変(満蒙問題の解決には思想があった!)あたりの本を読んでいると、中国は日本にとってお兄さんのような国だという表現がよく出てくる。

つまり、旧陸軍関係者あたりに言わせると中国への進出は欧米列強からの侵略を黙って見過ごすわけにはいかなかったので、”兄さん、しっかりしてくれとビンタを張ったのだ”という都合のいい解釈も出てくる。侵略する側とされる側の論理を一致させるのは後世の歴史観のなせる業だ。

その中国もすっかり立ち直り、いまや将来の覇権をアメリカと争う(2025年にアメリカと正面から戦える戦力を目指す~同書52頁~)までに成長してきた。広大な国土と人口がフルパワーを発揮すれば当然の成り行きだろう。しかし、日本は中国のことをお兄さんと思っているかもしれないが、中国が日本を弟とおもっているかどうか、それは別問題。

いずれ遠くない将来に日本は中国の軍門に下って、自分の孫子の時代には属国みたいな存在になっているかもしれないと個人的にひそかに憂慮しているところ。

とにかく中国の台頭が日本にとってどういう影響を及ぼすのか常に注目の的だと思うがこういう中国に対して実に辛口の中国論に出会った。

題して
「断末魔の中国」~粉飾決算国家の終末~(2007.11.15、学研新書刊)。

著者: 柘植久慶氏 1942年慶応義塾大学法学部政治学科卒業、在学中にコンゴ動乱に参加、フランス外人部隊などの格闘技教官、アメリカ陸軍特殊部隊グリーンベレーに所属、86年作家に転身。

著者によると、2008年の北京オリンピックから10年の上海万国博のあいだ、遅くとも11年までには中国が大崩壊すると大胆な予測をしている。当たらないときはどう責任をとってくれるんだと問い詰めたいところだがそれは何も書いていない。

したがって、中国に対してこういう見方もあるんだというワン・オブ・ゼムの考え方で気楽に構えて読んでみよう。

とにかく、中国大崩壊の根拠を示したこの本の内容は次のとおり。

第1章 深刻化の一途をたどる環境破壊
工業化優先の名の下に汚染物質の垂れ流し状態が続き、中国大陸北部の砂漠化による黄砂が汚染物質を運び光化学スモッグが再び日本の空を覆い始めた。”冥土・イン・チャイナ”の造語には思わず笑ってしまった。

第2章 食糧問題がアキレス腱に
第1章と関連して農業用水や地下水の汚染、農地の急速な減少、農薬の不適切な大量使用による農地の疲弊がこの国の食糧問題を根底から揺るがす。しかも輸出を通じてわが国の食の安全を脅かす。

第3章 超インフレーション国家
悪性のインフレーションが秘かに進行している。一体どれだけ紙幣を流通させているのかいっさい発表しない国家だがもはや完全に危険水位を超えていると推測される。やたらと最高額面の100元紙幣の新札ばかりが目立ち、さらに北朝鮮製の偽札が朝鮮との国境地帯に大量流入しており近い将来表面化するに違いない。

第4章 自殺的投資に走る民衆
2004年末には閑散としていた上海の株式市場がたった2年で様変わりして狂気の沙汰と化し、公金を横領したり借金を重ねての投機という異常な状態を招いている。


第5章 汚職は底なし沼のごとし
恐るべき役人の不正を紹介。賄賂により見逃された人身売買、公金横領、売春などの犯罪が横行し、環境汚染への目こぼしもその例に漏れない。

第6章 偽造・贋造・コピー天国
無法国家ぶりを紹介。歴史的文物の偽造、通貨などの贋造、そしてブランド物のコピーはこの国では常識。

第7章 一人っ子政策が暴動に発展
広西チワン自治区での暴動を実例に2006年の中国全土での暴動は10万件を超えている。

第8章 エネルギー至上主義の限界
エネルギー確保になりふり構わない浅ましい姿。アフリカの極悪非道国家に武器弾薬の供与、兵員の派遣を行うなど目的のために手段を選ばない。

第9章 格差社会が国家の亀裂を招く
年収1000万円クラスがゴロゴロいる反面、辺境では年収1万円にも満たない者が少なくない。この格差がどういった結果を招くか大胆な予測を展開。

第10章 断末魔の国家に水不足が止めを刺す
黄河以北の乾燥地帯が砂漠化していく。そして河川が汚染物質処理の場となっている長江の水が大量の健康被害者を生む。つまり、水不足と毒水が中国を近い将来滅亡させるという予測。

第11章 オリンピック開催の資格なし
大会が近づくにつれ問題山積の大会運営の現状。観客と選手の劣悪なマナー、ホテルのぶったくり料金、水の不足と水質の悪さ、汚染された首都の大気、ウイグル人などのテロ、インチキ商品と食物、売春婦と泥棒の大結集など枚挙にいとまがない。救いようのない史上最悪のオリンピックだから日本人は行かない方が賢明。

以上(異常?)、よくもまあ、これだけ悲観的な材料を収集したものだと思うが、いずれもおろそかに出来ない問題ではある。

この中で個人的に興味があるのは第9章「格差社会が国家の亀裂を招く」で、中国の人口約12億~14億人のうちたとえば1割にすぎない層が金持ちとしても約1億2千万人となる。

これは日本の人口に匹敵する規模で、まったくの桁違いの世界になるが、この層が果たして中国経済全体のけん引役となることが出来るのか、あるいは残る9割の層が押しつぶしてしまうのか、この辺が中国の命運を分ける気がする。

結局のところ、圧倒的な数の力がものをいうのか、あるいは日本のような適正規模の国の方が有利なのか、国家モデルでのかってない壮大な実験が始まっているといえよう。
                             
  

 


 

 


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