赤羽じゅんこの三日坊主日記

絵本と童話の本棚
日々のあれこれと、読んだ本のことなど書いていきます。

ねむの花

2013-09-18 09:08:54 | 日記
すてきな物語を読みました。
『ねむの花がさいたよ』にしがきようこ著 小峰書店 です。
Beの合宿の時、話題になった本です。

おかあさんが亡くなるという悲しい出来事からのきららの心模様、きららをとりまく人間模様をていねいに描いた作品。黒電話が鳴る所とか、いろんな場面も、目にうかぶようで、せつなさがあふれてきます。

そして、ラスト。希望をもって進んでいく様子が、子どもの視線で描かれていて、このラストの場面だけ、繰り返し読んでしまいました。祈るような気持ちで書いたという作者。その思いが行間からにじみでています。言葉をていねいに選んで、これしかないというものを探されて書かれたんだと思います。

この話の脇役として出てくるねむの木。なんと、引っ越した我が家のすぐそばにひとつ、見つけました。左右対称に行儀よく葉っぱが並ぶこの木。葉はやわらかく、少しの風にでもそよそよと揺れます。葉っぱの色のやわらかさも、好きですし、暗くなると葉をとじてしまうという特性も、おもしろいなーと思います。
今は、花が咲いてませんが、花が咲いたら、きっと、この作品を思いだすでしょう。

草木をつかった作品を読んで、わたしはずいぶん、花や木の名前を覚えました。
安房直子さんの作品から、サンショや、ホウノキ。キキョウやキンモクセイ……。
そして、歩いていて、その草木を見つけると、そのお話を思いだします。
キキョウとみると、人差し指と親指で、四角くして窓をつくってみます。(←知りたい人は、「きつねの窓」を読んでください)

そして、とくに心に残ってるのが、「花豆の煮えるまで―小夜の物語」のラストにでてくるホウノキの場面。
小夜がホウノキにのぼって、枝にたくさんのリボンをむすんでいく場面が、小夜の揺れる心と、そこはかとない悲しさをたたえて、簡単な言葉ばかりで書かれた作品なのに美しいです。
その後、旅館などで朴葉焼きなどを食べる機会があると、あの作品の深い東北の山間で静かに暮らす旅館の様子を思いうかべてしまいます。

わたしが安房さんの作品で草木の名前を覚えたように、きっと、『ねむの花がさいたよ』で、ねむの木を覚える読者がたくさんでてくるでしょう。農学部出身のにしがきさんには、そういった作品をこれからも書いていってもらいたいです。