JA6VQA 日々新たに

趣味のアマチュア無線で海外との交信や写真などを中心に、日々感じることを書き綴ってみます。
 

船戸与一著「満州国演義」

2017-03-20 15:57:55 | 読書
 無線の先輩から昨年の夏の終わりごろだったと思い
ますが紹介された本です。
 文庫本で全9巻ある大変な長編です。
 ようやく読了しました。

 私が読書をするのは、ほぼすべてトイレに座っている
時間に限られております。ですから読み上げるのに結構
時間がかかります。決して速読ではありません。どちら
かと言えば、理系の癖で丁寧に読んでいくほうです。

 著者の船戸与一氏はこの本を書き上げて、ガンのため
になくなっており、この小説が遺作となっています。

 満州事変から敗戦までの長い年月を主人公である敷島
家の4人兄弟を通して、克明に歴史を書いております。

 明治の富国強兵を描いた司馬遼太郎の「坂の上の雲」
全8巻で日露の戦い知りましたが、後からいろいろ調べ
るとかなり司馬遼太郎の偏った歴史観が見えてきました。

 しかしこの「満州国演義」は膨大な資料を読み、それ
らを小説の中に史実として上手にはめ込み、次第に深み
にはまっていく日本陸軍、ひいては関東軍の満州国を作
る過程の中で主人公の4人兄弟が歴史の渦に巻き込まれる
さまを描いています。そこには史実は史実としてうまく
小説の中に取り込まれています。

 もちろん4人の主人公の生き様も気になりますが、それ
より、いかに満州国が必要とされ、無理やりに作ってい
った史実を歴史教科書代わりに知ることが面白かったで
す。その時代の著名な歴史上の人物が沢山出てきますし、
戦後の政治の世界で活躍した人物の戦前、戦中の所業、
また中国大陸での蒋介石、毛沢東などの所業も書かれて
おり、なるほどそうだったのかと改めて知ることができ
ました。
 何しろ長編ですから読み進めることが第一といった感
じで何とか先へ先へと読み進めましたがあらためて昭和
を時代を振り返ってみた気がしました。

 自分が生まれて、何も知らずに育っていた時代に、日
本がもがき苦しんでいたことをこうして読み、知るとい
うことは大切なことで、歴史の教科書ではまずここまで
は詳しく書けないことです。

 著者が調べた資料が巻末に羅列されておりますが、も
のすごい量で驚きます。本当に全部を著者は読んだのだ
ろうかと思ってしまいました。

 今にして思えば、連合艦隊の真珠湾攻撃ばかりが暦史
の中で派手に取り上げられますが、関東軍の満州国樹立、
さらに陸軍の東南アジアへの進出、それに伴う欧州列国
の植民地化した国々の独立につながる、大東亜共栄圏を
めざした時代をこの小説で改めて知りました。

 もうすこし先にもう一度読み返してみたいと思ってお
ります。
 この小説を教えてくれた先輩に感謝です。
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