これは、タイトルの勝利ですね。
「うん?」と思わせ「なになに、鳥類学者なのに、鳥が好きじゃないってどーいうこと??」と引っかかり「読んでみたい」と思わせます。
自分で名乗るからには、著者の川上 和人さん、まぎれもない鳥類学者です。
俗世間では知られていないけど、鳥業界ではたぶんに著名な方だと思われます。
東大卒、国立行政法人所属の博士、という華々しいプロフィールですが、そんなこと微塵も感じさせない。バカバカしさが好ましい。
鳥が嫌いという人は、意外と多いですよね。
ワタクシの母校は、平和公園に近かったので、しょっちゅう校門前に鳩がいたのですが、鳩がこわくて校門に入れない同級生がいましたもん。
しかも、彼女の名前が「千鳥」でしたから、実に気の毒な話です。
彼女にしてみれば、まさに「千鳥って名前だからって、鳥が好きだと思うなよ」って話しですよね。
自然を守る、自然を観察することの過酷さ難しさを、ユーモラスに書き綴ってます。
自然豊かな場所=すなわち交通機関がまるで無い場所=絶海の孤島。
学者といえども、体力勝負。
どうやって島に上陸するかというと、泳ぐ。船着き場なんて無いから、沖合に停泊した漁船から、島まで荷物背負って泳ぐ。
やっとこさ島に上陸したら上陸したで、海鳥の営巣地への階段なんてあるわけない。ので絶壁をよじ登る。
過酷なわりには、脚光を浴びることは、ほとんど無いという鳥類学者という職業。
絶海の孤島の絶滅危惧種の野鳥を守ったからといって、経済活動になんら影響を及ぼすことも無い、と自虐ネタで開き直ってるけど、こういう人たちの忍耐と努力によって、地球の美しさが守られてるんだな、とじわりと感謝の気持ちが湧き上がってきます。
学者の書いた文章だけど、世俗に通じて、皮肉もきいて、客観的な視線で語られるので、読み応えのあるルポでした。
読み終わると、絶滅危惧種を守る活動へ、ささやかながら寄付したくなります。