ズボンなんかに穴があいたとき、今じゃ捨てる人もいるかもしれないが、
自分で直してみよう!ってやってみる方もいらっしゃるでしょう。
そのとき、今度は簡単には穴が開かぬよう、丈夫な布をあてがおうって
デニムのような固いはぎれを、周りを一度折り返したものを
ミシンでズダダダ と縫いつけてしまうと、
ひざを曲げたときなど、ズボン本体は伸びるけど
そのがっしりつぎ当ては伸びられず、縫い目から本体の生地が裂ける。
そうならぬよう、接ぎ布は本体と同じまたは
やや伸縮に富むものがよく、できれば端も折り返さないほうがよい。
しかし、それだと切りっぱなしになるから
周りがほつれてくる心配がある。
あらかじめ糸を数本抜いておいてふさふさにしておくのも手だが、
緯(よこ)糸ならまだしも、経(たて)糸は一般的に
よこよりもパラパラとほつれやすい。
本来、布は横に裂きこそすれ、縦に切ることはせず
折り幅のミミは死守すべきものだ。
縄文の貫頭衣は36cm幅の反物の耳はそのまま生かす。
着物は、どうしても衿の部分は縦に裂いているが
くりんと切り抜く洋裁とは違って、四角いまま使うので
腰ひもに縫ったり、修繕用に使い回せる。
さて、話をもどすと、厚みをつけずに端処理するには
ロックミシンという方法があるが、
網の袋をかぶせるが如く、大量の糸を使ってかためるので、
もしも取り消したりやり直すとき、その糸を取り除くのが
大変な手間になる。ロックミシンの処理は、見た目も美しいとはいえない。
それならば、切り放した布の縁の糸を数本抜いて
フサを出した上に、手縫いで、端をまたぐように
くりんくりんと螺旋状にかがり縫いしておくのがよい。
ほつれる心配はぐんと減る。
この処理には、氣持ち太めの糸が向いているので、
刺し子糸の細、中、太を生地の糸の太さと相談して選びたい。
この技術は、手ぬぐいにも応用できる。
手ぬぐいは一般的に、速乾と清潔を保つために
三つ巻き処理をせず切りっぱなしのままだ。
数本よこ糸が抜ければ割合安定するが、使い方によってはほつれが続く。
端をらせん状にかがり縫いすれば、折り返すことなくほつれを防げるし、
縫い糸の色を選べばおしゃれ味も加わる。
こういうことは、少々かじっている人には常識なのかもしれないが、
僕は、骨董市で入手した昔のきものをほどいたり、古裂と
コミュニケーションをとりながら、祖先の技や思いを共有し、
そんな夜は明け方まで、手が固まってしまうまで、
時を忘れて縫い試してしまう。
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