呑む気オヤジ/蔵王山麓蓬莱庵便り

蔵王山麓暮らしのオヤジの日記。合唱も映画もドライブも温泉も、たまには俳句も・・・😄

呑む気オヤジの、読む!~「いつかX橋で」

2011-06-13 | 本の話
いつかX橋で (新潮文庫)
熊谷 達也
新潮社



♪「いつかX橋で」熊谷達也著 新潮文庫

熊谷達也氏の太平洋戦争末期および終戦後の仙台を舞台とした長編小説。以前読んだ短編集の「懐郷」がとても胸に染みたので、この小説はぜひ読みたかった(やっと文庫本化された)。「懐郷」に収録されている「X橋にガール」のコールガール淑子とキャラがダブるのも読みたかった理由の一つだ。

終戦直前の昭和20年7月の仙台大空襲で、母と妹を目の前で焼夷弾に焼き殺された祐輔。祐輔は師範学校に通う17歳の少年だが、終戦後は何を目標に生きていけばよいか分からない。自分は何のために生きているのか。自問自答を繰り返す…。

仙台駅の北側に掛かる「X橋」を舞台とした、混沌として先が見通せない暗欝たる青春グラフィティーだ。
僕は「もはや戦後は終わった」と言われた昭和31年生まれ。でも子供のころには、まだまだ仙台市内に戦後の傷跡が残っていたことを覚えている。
もう今は無くなった「X橋」だって、もちろん知っている。X橋から仙台駅東口に至る街並みに、昔の「赤線街」や「特殊飲食店街」のような「痕」が残っていたことも覚えている。
「あ~、そうか、あの街並みで祐輔達はもがき苦しんで、戦後を生きたんだ」という、実体験のようなものを感じることもできる。う~ん、やっぱりこれって「仙台小説」だなぁ~。(スミマセン、ストーリーは省略です)


さて小説の印象は…。
祐輔が仙台空襲を経験し、母や妹を失い、虚ろな日常を続けていく…。空襲で焼夷弾の炎に追いかけ回されるシーンはそれなりに迫力があるが、最初はどうも胸に迫ってこなかった。終戦後のいろいろなシーンも、結構淡々としていて、ちょっと物足りなかった。もっとも、平和ボケした呑んべオヤジには、分からないのかなぁ~。
でも、でもです!! エンディングは、やっぱり泣ける。あぁ~、やっぱり君の人生はそういう結末なの!?そういう生き方しかできなかったの?なんでもっと安易に生きなかったの??
心に胸に染みる終戦直後の若者の「青春グラフィティー」なんですなぁ。仙台っていいなぁ~。やっぱり僕は仙台っ子だなぁ~。
いろいろ頑張っぺ、仙台!


コメント (3)
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