呑む気オヤジ/蔵王山麓蓬莱庵便り

蔵王山麓暮らしのオヤジの日記。合唱も映画もドライブも温泉も、たまには俳句も・・・😄

呑む気父さんの読書感想文・その14 「星々の舟」

2006-02-09 | 本の話
星々の舟

文藝春秋

このアイテムの詳細を見る


♪「星々の舟」村山由佳著 文春文庫(上記は単行本)
この作品は03年度上期の直木賞受賞作品です。当時興味があって読もうと思いながら、審査員の評価が分かれていたり題名が乙女チックだったりで、結局単行本を買うまでには至りませんでした。今回は文庫本化されてすぐに買って一気に読みました。とても良かったです。全く「乙女チック」からはかけ離れた、私の最近の読書の中ではベスト3に入る名作だと思います。
頑固で無口で時折暴力的な父親とその後妻、そして腹違いの兄弟姉妹の一家を巡る、複雑な感情の綾を切なく語ります。兄弟姉妹それぞれ4人と長男の娘、そして父親と合計6人の物語が短編として描かれます。それぞれが抱える苦悩がどうしようもなく胸に染みます。でも中年のおじさんとしては、団塊の世代の長男「貢」にシンクロナイズしてしまいます。それと頑固一徹に見える父親「重之」が内面に持つ誰にも想像できない懊悩に心を打たれます。
私には家族がいて、両親も幸い健在です。家族とは毎日ひとつ屋根の下に暮らしています。でも血の繋がった自分の親も子供も、結婚して20年になろうとしている妻も、実際何を考え、何を感じながら生きているのかは、お互いにほとんど分かっていないのです。分かったつもりになっていたことを今更ながらに思い知らされました。そして「親子なんだから、夫婦なんだから、黙っていても分かり合える筈」という訳ではないことも…。
家族の中でも労いや詫びのことばは必要なのでしょう。「あの時一言言っておけばよかった」と後悔することのないように。親と離れて暮らし始めて30年以上経ちました。1年のうちいったいどれだけ話しているでしょう。最近は母から電話が来ても代わろうともしません。高校生の息子とは、ほとんどまともに会話を交わしていません。父や母は何を想い、考えて年老いてゆくのだろう。妻や息子は毎日何を感じて過ごしているのだろう。そして私のこの心の内が、いったいどれ程に伝わっているのだろう。
でも、分からなくても家族は家族、存在そのものが貴重なのだと思いたいものです。
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする