6月29日(水)晴
ほんとうに暑い日が続きます。名古屋でも6月の最高気温を更新したそうです。昼にランチに出ただけでぐったりです。同じ暑さでも海の上だと結構涼しく感じますが都会のコンクリートジャングルでは風が吹いても熱風です。空を見ればもう夏の空なのですがまだ梅雨明けにはならないようです。
さて今日の話は「物もとよりあい累わし(わずらわし)、二類あい招くなり。」と言う荘子の言葉を考えてみましょう。荘子は立ち入り禁止の栗林で、カササギに似た大きな鳥が飛んできて枝にとまったのを見つけました。そこで弓を手にとって狙いを定め、この鳥を射止めようとしました。ところが良く見ると鳥は葉陰のカマキリを狙っているようでした。さらに視線を転じるとカマキリは木陰のセミを狙っているのです。当のセミはそんなこととは知らず心地よさそうに鳴いているのです。セミもカマキリも鳥もそれぞれ他に狙われているのに、毛の先ほども身の危険を感じていないではありませんか。こんなふうに世の中のもろもろは、互いに害しあうものである。と言う意味で「物もとよりあい煩わし」となるのです。そして「二類(利と害のこと)あい招くなり。」と言って利益と害毒はお互いに呼び合うものだと言っています。そう言う荘子も鳥やカマキリやセミに夢中になって、立ち入り禁止の栗林に入って管理人に見つかり、こってり油を絞られることになったそうです。
我々日本人も豊かさに満足して、電気を使い放題な生活に慣れていたところに、原発問題が発生し、電力不足のため節電を余儀なくされています。世の中と言うものは元々お互いに害しあうものなのです。豊かさを謳歌している一方で強烈な反動が起こる訳です。そう言えば「栄枯盛衰」なんかも同じたぐいのことわざかもしれませんね。いずれにしても二千数百年も前に人間は悟っていた訳ですけれども、同じことを繰り返している我々は果たして進歩しているのかよくわかりません。楽をするための道具は一杯創ってきたのだけれども、心の進歩と言う面では進歩できない動物なのかもしれません。
そうだからと言って悲観する必要もありません。そう言うものだと知っているだけでも意味のあることのような気がします。少なくとも果てしない欲望のブレーキになることが長続きするための必要条件なのですから。
それではまた。