カルテ番号 ろ・1(1)
蝋山辰雄は山村地区の小さな役場に勤めていた。
定年し、再雇用で関連施設にいたが、65歳の誕生日で二度目の定年だった。
子供は独立し、妻とも家庭内別居のようなものだった。
一人が孤独で淋しいとも思っていなかったが、つまらない人生だとは思っていた。
唯一の趣味は天体観測だった。
身分不相応なほどの天体望遠鏡を持っている。
山の上に小さな土地を借り、小さな個人の観測小屋を作った。
狭いが、一応寝泊りは出来る。
雲さえなければ、望遠鏡で星を見るのが至福だった。
誰とも話さない。
特に同好会のようなクラブにも入っていない。
本人は孤高きどりの観測者だと思っていた。
生活圏からの光は弱いとはいえ、遠くの町の光も見える。
山の上とはいえ、車の通れる道はある。
熊が一番の気がかりだが、小屋の中なら大丈夫だろう。
子供の頃の秘密基地のようで、ここに居るのは楽しかった。
家に帰っても、話もしない妻といるのは、かえって苦痛だった。
原因は多分自分にあるのだろう。
コミュニケーションが苦手なのだ。
(登場する人物・組織・その他はフィックションです)
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