「風間陽水の依頼簿（カルテ）・682」

カルテ番号　み・5（37）

院長は頷いてから、答えた。
「そうですね。活かせますね。
でも、それほど簡単ではありません。
活かせないわけではない、という言い方の方がいいと思います。
過去は現在につながっていますが、未来にはつながっていません。
未来に活かせるという言い方は、直接活かせると勘違いします。
ターニングポイントは常に現在にしかありません。
未来には、未来の現在があります。
ですが、過去には過去の現在がありません。
過去からの学びは、直接活かすことができないのです。
それどころか、ほとんどは現在にも活かせてないのです。
言葉では綺麗事を並べますが、過去の過ちは現在も繰り返しています。
過ちから学ぶ、という方法は、効率が悪いのです。
というか、ほとんど役に立たないのです。
学びから向上するというのは、結構勘違いなのですよ。
向上、あるいは、より幸せな方向は、学びとは別の次元でしょう。
過去を何も知らなくても、明るい未来は作れるのです。
過去を学ぶ、というのは、過去にこだわることです。
それは、とても狭い領域の世界しかみることができません」

（登場する人物・組織・その他はフィックションです）

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