よく晴れわたった志摩の海は、四季を通じて様々な表情を見せてくれる。サンライズ(日の出)の夜明けの海やサンセット(日没)の夕映えの海は、朝紅(あさくれない)や夕紅(ゆうくれない)、さらに条件によっては茜雲(あかねぐも)や紫雲(しうん)が漂い、感無量の海景を見せてくれる。
各地に設備された特定の展望台以外にも、当地には隠れた絶景ポイントが数多くある。
真昼においても、入り江や岬の地形、リアス式海岸や多島海のマリン・ブルー、有湾台地のグリーン・ヒルなどが織り成す志摩の海景は、自然美そのものである。
志摩の風景・風物などを追って走ってみると、その日の天気や時間帯によって表情がかなり異なり、時々刻々と移り変わってゆく様子がよく解る。
志摩地方から奥志摩にかけての海岸は、東西に広がっている場所が多いので、太陽との位置関係によって海の色が全く変わってしまうし、月齢による大潮・中潮・小潮の違いや、波浪、うねり、凪、引き潮、満ち潮などの潮時(しおとき)の差によっても、微妙に変貌してしまう。
それに、荒磯や砂浜の渚に打ち寄せる磯波(寄せ波や砕け波、大波・小波、漣など)の表情を入れると、全く同じ風景は皆無と言って良い。
昨今は、暴風時の高潮や津波の対策で、入浜となっている漁村等の海岸には、波消しブロックがぎっしりと積まれ、防波堤も補強され随分高くなった。
海岸に人造の地物(じぶつ)が多いと、海景の自然美が半減してしまうので、志摩の海景写真を撮る時は、自然の風景の美しさと共に、なるべく昔ながらの素朴な風物のみを念頭に、各地を探索している次第である。