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語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【言葉】瑣事 ~芥川龍之介の華麗なレトリック~

2010年06月01日 | エッセイ
 人生を幸福にする為には、日常の瑣事を愛さなければならぬ。雲の光り、竹の戦(そよ)ぎ、群雀の声、行人の顔、――あらゆる日常の瑣事の中に無上の甘露味を感じなければならぬ。
 人生を幸福にする為には?――しかし瑣事を愛するものは瑣事の為に苦しまなければならぬ。庭前の古池に飛びこんだ蛙は百年の愁を破ったであろう。が、古池を飛び出した蛙は百年の愁を与えたかも知れない。いや、芭蕉の一生は享楽の一生であると共に、誰の目にも受苦の一生である。我我も微妙に楽しむ為には、やはり又微妙に苦しまなければならぬ。
 人生を幸福にする為には、日常の瑣事に苦しまなければならぬ。雲の光り、竹の戦(そよ)ぎ、群雀の声、行人の顔、――あらゆる日常の瑣事の中に堕地獄の苦痛を感じなければならぬ。

【出典】芥川龍之介『侏儒の言葉』(『芥川龍之介全集7』、ちくま文庫、1989、所収)
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