語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【本】新聞やテレビが社会問題をつくる ~日記から~

2016年08月14日 | エッセイ
 古い倉庫を始末し、新しく設置した際、古い倉庫から出てきた本の一。

 朝日新聞文化欄に連載されたコラムの1979年版。書き手は開高健から宮本憲一まで25人。一編600字、一人が9ないし12編を書いている。内容は、身辺の些事から世相診断、文明時評まで。
 学芸部によるあとがきによれば、短文ながら、いや逆に短文ゆえに読者は多かったらしい。開高健が檜山良昭『スターリン暗殺計画』を絶賛したところ、たちまち多数の書店で売り切れたという逸話がある。ちなみに、この本は後に推理作家協会賞を受賞した。
 コラムの一例を引く。
 1979年当時、子どもの自殺の増加がマスコミをにぎわした。なだ・いなだは、講演会で聴衆に質問した。
 「最近子どもの自殺は増えていると思うか?」
 挙手多数。
 「逆に減っていると思う人は?」
 一人もいない。
 そこで、なだ・いなだは三度目の質問をした。
 「では、自殺の統計を調べた人はいるか?」
 これまた一人もいない。
 じつは、厚生省(現在は厚生労働省)の統計によれば、昭和30年前後をピークに急減した。1979年当時、最大の時期に比べて3分の1になっている。
 新聞やテレビが子どもの自殺を大きくとりあげるから、読者、視聴者は増えたという印象をもつのだ、となだ・いなだは解説する。

□朝日新聞学芸部・編『日記から』(朝日新聞社、1980)
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