語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【原発】画期的な大津地裁の仮処分決定

2016年04月01日 | 社会
 (1)東日本大震災・東京電力福島第一原発事故からもう5年になろうとする3月9日、大津地裁(山本善彦・裁判長)は、滋賀県の住民が申し立てた仮処分申請事件で、関西電力高浜原発3・4号機(福井県高浜町)の運転を差し止める画期的な仮処分を決定した。

 (2)福島第一原発事故後、司法が原発の運転差し止めを命じたケースは、
  (a)関電大飯原発3・4号機(福井県おおい町)に係る福井地裁判決(2014年5月)
  (b)関電高浜原発3・4号機に係る福井地裁の仮処分決定(2015年4月)
しかない。なお、(b)の仮処分決定に対して関電が異議申し立てを行い、異議審で仮処分決定を取り消す決定が行われている。
 (a)と(b)の裁判長は、いずれも樋口英明・裁判長だった。
 しかし、今回は樋口英明・裁判長とは別の、山本善彦・裁判長が原発の運転を差し止める仮処分決定を出した。

 (3)今回の大津地裁の仮処分決定は、今後の原発差し止め訴訟に大きな影響を与えるものと予想される。
  (a)「発電の効率性をもって、これらの甚大な災禍と引き換えにすべき事情であるとはいい難い」として、効率よりも憲法が保障する人格権を重視し、稼働中の原発について運転を差し止める仮処分を決定したのは、全国で初めてのことだ。
  (b)また、今回の大津地裁の仮処分決定は、原発立地県ではない隣接する滋賀県の住民が申し立てた仮処分申請事件だ。原発事故被害の広域性を考慮して原発の運転の差し止めを認めた仮処分決定であることも画期的だ。
  (c)さらに、今回の大津地裁の仮処分決定が、国家主導の具体的で可視的な避難計画が早急に策定されることが必要であり、この避難計画をも視野に入れた幅広い規制基準が望まれるばかりか、福島第一原発事故という過酷事故を経た現時点においては、そのような基準を策定すべき信義則上の義務が国家にあると判示していることも、重要な指摘だ。【注】
 (4)今回の大津地裁の仮処分決定は、建屋内の調査を踏まえた福島第一原発事故の原因究明が十分に行われないまま、「再稼働ありき」で原発の再稼働を進めてきている政府や力会社の原発政策に対し、重大な警鐘を鳴らす決定だ。

 【注】<決定は、原子力規制委員会の新規制基準や、政府が了承した住民避難計画の妥当性に疑問を投げかけた。だが田中俊一規制委員長は「基準は世界最高レベルに近づいている」と反論。政府も避難計画は見直さず、「規制委の判断を尊重して再稼働を進める」と繰り返すばかりだ>【社説「原発停止命令 国民の不安を直視せよ」(朝日新聞デジタル 2016年3月27日)】

□宇都宮健児「画期的な大津地裁の仮処分決定」(「週刊金曜日」2016年3月25日号)
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