語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【本】『ナニワ金融道』の青木雄二の生涯を夫人が語る

2015年03月26日 | ノンフィクション
 本書は、夫人による、読みやすい語り口の、青木雄二・伝。
 そのまだ若い死(享年58)の後、彼と関わりのあった人々にインタビューして回り、人生を辿りつつ、伴侶としての感想を加える。

 青木は、工業高校(土木専攻)を卒業後、山陽電鉄に入社した。しかし、社会の現実(<例>春闘で要求したら4割も賃金が上がった)を奇妙だと感じることが多かったらしい。小学生時代のガキ大将は、気持ちにそぐわないと上司をもぶん殴る社会人となった。
 3年で辞めて、父の郷里の岡山県久米南町役場に再就職した。しかし、岡山県の片田舎の、風通しの悪い風土が肌に合わなかった。3か月で辞めて、大阪に出奔。職を転々とした。最後に漫画家として立つ。
 売れっ子になってから、朝の10時から夜の10時まで、ほとんど休憩もなしに仕事をしていた。高収入なのにロクな食事を摂らず、インスタントラーメンで済ませることも多々。そして大量の喫煙と飲酒。
 50歳で結婚してから栄養面では改善した。計理などの事務面の負担も減った。しかし、好事魔多し。腱鞘炎、膵臓炎、扁平上皮癌・・・・といくつも発病し、最後に肺癌が命を奪った。

 身近な人(夫人)による性格観察が興味深い。
 仕事(漫画作品)のための綿密な取材。まっすぐで、開けっぴろげで、幾分子どもじみた性格。他方、さまざまな拘り。
 デザイナー会社経営の経験から、作品に対する編集者からの注文(「ここを直して」とか)には、我を張らずに応じた。注文主の意向を第一とした。これが広く読者を獲得する一因となった、と夫人は書いている。

□青木若代『夫・青木雄二 ~ナニワの異端漫画家の真実~』(廣済堂出版、2004)
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