語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【詩歌】村上昭夫「去って行く仏陀」

2015年06月03日 | 詩歌
    「リトル・ブッダ」
   

 仏陀は去ってゆくらしい
 森深く入っていく小鹿のように
 ひとり歩いてゆくらしい

 アヌルダよ
 世間の幸いを求むるの人
 また我に過ぐるはなし

 仏陀は去ってゆくらしい
 谷川をさかのぼってゆく小魚のように
 人びとから抜け出してゆくらしい

 何時からか独りの身だった仏陀は
 ひとりで別離を告げるだろう
 それは黄昏れてくる野末のように
 野末をゆく一点の鳥のように
 聞けアヌルダよ
 今こそ幸いを求むるの人
 また我に過ぐるはなし

 仏陀は去ってゆくらしい
 世の誰よりも痛み烈しく
 世の誰よりも悲しみ深く
 ひとり歩いてゆくらしい

□村上昭夫「去って行く仏陀」(『動物哀歌』、1967【第18回H氏賞】)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 【参考】
【詩歌】村上昭夫「兎」
【詩歌】村上昭夫「空を渡る野犬」
【詩歌】村上昭夫「太陽にいるとんぼ」
【詩歌】村上昭夫「金色の鹿」
【詩歌】村上昭夫「雁の声」
【詩歌】村上昭夫「うみねこ」
【詩歌】村上昭夫「鴉」
【詩歌】村上昭夫「荒野とポプラ」
【詩歌】村上昭夫「シリウスが見える」
【詩歌】村上昭夫「賢治の星」 ~ふたごの星~

    「リトル・ブッダ」
    


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。