語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【詩歌】村上昭夫「金色の鹿」

2015年05月30日 | 詩歌
 金色の鹿を見た
 金色の鹿を見たと言っても
 誰もほんとうにはしてくれない

 ぼくが頼りにならない少年だったから
 ぼくのなかの目立たない存在なのだから
 誰もそっぽを向いては
 足早に行ってしまう

 でもその山ならばたしかにある
 みなが五葉山と呼ぶ山で
 東は直に太平洋で
 広がる午前の雲を背に深く負いながら
 あの鹿はどの方向へ向かったのだろう
 そのことをどのように説いたなら
 ぼくが分かってもらえるのだろう

 鹿が死んでしまうと
 ぼくのなかの宝珠が死ぬという
 言い伝え
 ぼくはそのことを
 夕凪の便りのように聞いた筈なのに

□村上昭夫「金色の鹿」(『動物哀歌』、1967【第18回H氏賞】)
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 【参考】
【詩歌】村上昭夫「雁の声」
【詩歌】村上昭夫「うみねこ」
【詩歌】村上昭夫「鴉」
【詩歌】村上昭夫「荒野とポプラ」
【詩歌】村上昭夫「シリウスが見える」
【詩歌】村上昭夫「賢治の星」 ~ふたごの星~

      宮島の鹿
     


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