語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【震災】過剰徴収したビル管理費の返還は ~神戸市長田区~

2015年03月07日 | 社会
 (1)阪神・淡路大震災後に再開発で建てられた高層ビルの「管理費が高すぎる」として、入居していた商店主ら(神戸市長田区)が、ビル管理会社を相手取り、過剰徴収した管理費の返還を求めていた。
 返還請求額は、約3億1,500万円。これをめぐる訴訟で、神戸地裁は2月10日、店主らの請求を棄却する判決を言い渡した。

 (2)原告は、「アスタくにづか」9棟の店舗所有者58人。
 (1)のビルは、JR新長田駅南側の再開発地区に立地する。1、2階および地下が店舗で、上階は分譲マンション。
 神戸市は、同ビルの管理を第三セクター「新長田まちづくり」に委託してきた。同社は、エスカレータや空調の維持費など管理費の多くを店主から徴収していた。
 これに対し、原告は「住宅所有者より4.75倍から8.7倍も高いのは違法」と主張していた。

 (3)(1)の判決で、酒井和徒・裁判長は、格差が生じていても店舗所有者と住宅所有者で釣り合いが取れていないとは言えない、と退けた。
 原告は語る。
 「頭にきます。後から入ってきた住人の方がずっと安い。不公平です」【藤原満世】
 「管理費が高すぎて毎月ほとんど赤字。これでは商売人として生きていけない」【染谷繁】
 「敗訴したが、この裁判過程で二つのビルでは管理者を交代させることもできた」【江後利幸・弁護士/代理人】

 (4)同地区は長屋がひしめいていた。
 震災で消滅したのを契機に、神戸市は44棟もの高層ビルを建てる再開発計画を強行、8割近くを完成させた。さらに、店主らが元の地区で商売する条件として、分譲店舗購入も押し付けた。
 だが、現在、商店街は閑散としている。店舗を売ろうにも買い手がつかない。
 過剰開発のしわ寄せの責任を、市当局の誰一人取ろうとしない。

□粟野仁雄(ジャーナリスト)「神戸地裁訴えを棄却 ~“高額管理費”に返還請求~」(「週刊金曜日」2015年2月20日号)
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 【参考】
【震災】住民無視の巨大開発のツケ ~神戸市~
【震災】住民の生命や生活より箱モノ造りを優先 ~神戸市~
【震災】神戸市長田区に見る「復興災害」(2)
【震災】神戸市長田区に見る「復興災害」(1)
【旅】復興を絵画で表現できるか ~平町公の試み~
【震災】二重ローン 得するのは銀行だけだ ~その対策~
【震災】復興のカギはパイプ役(住民の自主組織) ~神戸の過ち、奥尻の教訓~
書評:『神戸発 阪神大震災以後』
書評:『復興の闇・都市の非情 --阪神大震災、五年の軌跡』


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