語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【佐藤優】真理は人を自由にする ~今ファシズムを学ぶ理由(6)~

2018年04月13日 | ●佐藤優
 (1)例をあげよう。
 トランプ政権はファシズムとどのぐらい親和的なのか。
 安倍晋三政権下の日本はファシズムへと接近しているのか。
 こうした問いに対して、日本の言論界は明確な説明を与えることが、ほとんどできていない。その理由は、ファシズムの概念をきちんと捉えていないからだ。

 (2)ファシズムの周りには、ファシズムと混同して語られるいくつかの概念がある。民族主義、純血主義、ナショナリズム、全体主義、ナチズム、独裁など。その違いを理解しないと、上記のような問題を正確に把握することはできない。

 (3)聖書には、「真理を自由にする」という言葉がある。
 不自由や束縛から目を背けるだけでは、苦境は解消されないどころか、ますます追い詰められていくばかりだ。いったい何が自分に不自由をもたらしているのか。そのメカニズムを深く理解しえた時、初めて人は、「制約には『外部』が存在することを知り、自由の感覚を得る」ことができる。

 (4)ファシズムのメカニズムを深く学ぶ必要があるのは、同じような理由からだ。ファシズムの内在的論理を理解することができれば、少なくともファシズムの暴走に振り回されることはなくなる。
 日本のファシズム理解が浅い原因の一つとして、近代イタリア史とファシズムの展開が十分に理解されていないことが挙げられるだろう。別の言い方をすれば、ナチズムや戦前日本の軍国主義などをファシズムの典型としてイメージしてしまうのだ。
 そこで本書では、近代イタリアの歴史までさかのぼり、ファシズムが生まれる過程を詳細に追うことで、ファシズムの思想性や論理、問題点を明らかにしていく。
 資本主義と共産主義のどちらをも乗り越えようとしたファシズムの内在的論理とは、どのようなものなのか。それを知ることで、新・帝国主義のゆくえを展望する一助とすることが本書の目標だ。

□佐藤優『ファシズムの正体』(集英社インターナショナル新書、2018)の「序章 なぜ今、ファシズムを学ぶ必要があるのか」の「真理は人を自由にする」

 【参考】
【佐藤優】日本人のファシズム・アレルギー ~今ファシズムを学ぶ理由(5)~
【佐藤優】福祉国家としてのファシズム ~今ファシズムを学ぶ理由(4)~
【佐藤優】グローバル資本主義に対する三つの処方箋 ~今ファシズムを学ぶ理由(3)~
【佐藤優】新・帝国主義の時代 ~今ファシズムを学ぶ理由(2)~
【佐藤優】日本のファシズム関連本は役に立たない ~今ファシズムを学ぶ理由(1)~
【佐藤優】まえがき ~『ファシズムの正体』~
【佐藤優】『ファシズムの正体』の目次

 


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【保健】世界各国のパンを比... | トップ | 【佐藤優】英EU離脱と北ア... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

●佐藤優」カテゴリの最新記事