語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【佐藤優】日本のファシズム関連本は役に立たない ~今ファシズムを学ぶ理由(1)~

2018年04月07日 | ●佐藤優
 (1)なぜ今、ファシズムについて学ぶ必要があるのか。それは世界各国でファシズムの進展する可能性が今後、高まってくるからだ。現代の世界情勢を分析するうえで、ファシズムの論理を知らないことは致命的だ。

 (2)しかし、現在日本で出版されているファシズム関連本の多くは、まったく役に立たない。
 〈例〉現代日本において「ファシズム」は多くの場合、自由主義・共産主義を排撃する「極右の国家主義的政治形態」と考えられている。
 ところが、本来のファシズムとは、第一次世界大戦後のイタリアに登場した「国家ファシスト党」の政治運動や思想を指す。それは一言でいえば、失業・貧困・格差などの社会問題を、国家が社会に介入することによって解決することを目指すものだった。
 しかるに、多くの日本人は「ファシズム」と聞くと、まっさきにナチス・ドイツを思い浮かべてしまう。ファシズムとナチズムを等号で結びつけてしまっている。そのため、「ファシズム」「ファシスト」という言葉は、日本では戦後から現代まで「絶対悪」を示す罵倒語としてしか使われてこなかった。
 「ファシズム=ナチズム」と捉えているかぎり、複雑な論理で組み立てられているファシズム現象を分析することはできない。だからこそ、ファシズムの本質とその内在的論理をしっかりとつかんでおくための本が必要なのだ。

□佐藤優『ファシズムの正体』(集英社インターナショナル新書、2018)の「序章 なぜ今、ファシズムを学ぶ必要があるのか」の「日本のファシズム関連本が役に立たない理由」

 【参考】
【佐藤優】まえがき ~『ファシズムの正体』~
【佐藤優】『ファシズムの正体』の目次

 


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