語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【佐藤優】日本人のファシズム・アレルギー ~今ファシズムを学ぶ理由(5)~

2018年04月10日 | ●佐藤優
 (1)「福祉国家としてのファシズム」【注】のように説明しても、福祉国家とファシズムの結びつきに対してピンと来ない人のほうが圧倒的に多いだろう。
 その理由ははっきりしている。「日本ではファシズムという言葉自体が、マイナスの評価を帯びすぎてしまっている」からだ。ファシズムという言葉を出した時点で、日本では議論の対象にもならない。
 しかし、ファシズムをきちんと思想的レベルで捉えておかないと、かえってまずい事態がおこり得る。
 なぜか。
 それは「一見、口当たりのいい福祉国家政策」のなかに含まれている、排外主義的な側面を見逃してしまうからだ。ファシズムとナチズムは論理構成からして異なるが、ファシズムの取り扱い方を間違えると、ナチズムのような、アーリア人が優秀であるという「人種神話」に傾きかねない。

 (2)ファシズムは、資本主義や共産主義を乗り越える思想として 20世紀に登場した。グローバル資本主義が暴走し、それに対抗するイデオロギーが存在しない現代において、このような歴史は必ず繰り返される。
 その時のファシズムは、おそらくかつてのものとは姿を変えて現れることになるだろう。20世紀ファシズムが犯した過ちを繰り返さないためにも、ファシズムについて正面から取り組み、整理しておくことは大切だ。
 ファシズムという言葉にアレルギーを持って、回避しているだけではかえって事態は悪化してしまう。

 【注】【佐藤優】福祉国家としてのファシズム ~今ファシズムを学ぶ理由(4)~
【佐藤優】福祉国家としてのファシズム ~今ファシズムを学ぶ理由(4)~

□佐藤優『ファシズムの正体』(集英社インターナショナル新書、2018)の「序章 なぜ今、ファシズムを学ぶ必要があるのか」の「日本人のファシズム・アレルギー」

 【参考】
【佐藤優】福祉国家としてのファシズム ~今ファシズムを学ぶ理由(4)~
【佐藤優】グローバル資本主義に対する三つの処方箋 ~今ファシズムを学ぶ理由(3)~
【佐藤優】新・帝国主義の時代 ~今ファシズムを学ぶ理由(2)~
【佐藤優】日本のファシズム関連本は役に立たない ~今ファシズムを学ぶ理由(1)~
【佐藤優】まえがき ~『ファシズムの正体』~
【佐藤優】『ファシズムの正体』の目次

 


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