(1)千葉県香取郡多古町は、風光明媚、昔から「多古米」という良質米で名高く、さらに関東ローム層の畑で採れたサツマイモ、ニンジンなどの根菜も味のよさで知られている。
そんな条件に恵まれた地域ですら、農業の高齢化と後継者不足で耕地放棄地の拡大が止まらない。
農水省のデータ(2011年)によれば、ただでさえ減り続けている農業人口の実に6割が65歳以上の高齢者で占められている。
(2)むろん、生産者が手をこまぬいているわけではない。
「多古町旬の味産直センター」がスタートしたのは1987年2月のこと。高橋清・同センター代表理事(64歳)や地元民が試行錯誤の末、活路を見出したのは野菜を中心とした産地直送だった。いまでは農産物や加工品を卸す組合員150人、年商15億円の規模に成長している。
かじると芳醇な香りが鼻に抜け、舌には涼やかな甘さが残るミニトマト。市場に出すと買い叩かれることがあるが、産直で生協や消費者団体と取引することで収入が安定した。
(3)「食える農家」になることが、日本農業にとって最大の課題である後継者不足を解決するための回答となり、前提になる。
だが、逆に年々農家が「食えなくなる」要因は増えるばかりだ。
1990年代と比べると、農産物価格は3割近く下落。コストは上昇しているから、利益は実質的に半分になっている感じがする。コメなどは平均価格にすると同量のミネラルウォーターよりも安いぐらい。採算がとれないのに農家をつげ、というのは無理だ。【高橋代表】
だから、徹底して品質と安全性にこだわり、市場に出回る農産物の価格が高くなろうが低くなろうが、安定した値段で勝負できるようにした。そのため、「センター」として独自の有機配合肥料を作り、各農家へ配布するなど、あらゆる工夫をしている。生き残れない農家に後継者がいるはずもないのだから。【同】
(4)千葉県には「産直銀座」と呼ばれるほど、同じ試みは多い。
「センター」独自の強みは、消費者との徹底した交流だ。生産者にとって顧客の反応がわかる「顔の見える関係」にするための努力が続けられている。
<例1>市民農園「私の田んぼ」・・・・都会の消費者が水田の利用料を払い、年に数回多古町を訪れて田植え、稲刈り、秋の収穫祭に参加する。その間、生産者が水田を管理する。利用者は田仕事の経験を通じて、コメ作りのプロセスや水田の生態系、農業の大切さを学ぶ。収穫されたコメは、「センター」の精米施設からつきたての状態で送られる。利用者は数千人ほど。特に子どもと一緒に水田や農村を体験したい、という母親が増えている。
<例2>生協等の会合に出向き、農産物の試食会、国産大豆を使った味噌作りの指導、トウモロコシ狩りを始めとするさまざまなメニューが盛り込まれた「農村体験」募集。
・・・・美味しく安全な食べ物をこうやって生産している、という情報を生産者から消費者に伝えないかぎり、産直でも、消費者が商品を選ぶ基準は年だけになってしまう。交流して実際に農村を訪れて、ちゃんとした農産物なら適正価格がある、ということを理解してもらえれば、価格競争に巻きこまれない農業ができる。農家の経営も安定する。【竹盛智敬・「センター」総合直産課長】
(5)産直が農産物の流通に占める割合は数%程度。すべての農民が同じやり方をできるわけではない。農産物は「安ければいい」という消費者も圧倒的に多い。
要は、それぞれの条件に合ったやり方で各自がアイデアを出すしかない。【高橋代表】
□本誌取材班「価格競争に捲き込まれない農業へ ~千葉県多古町の農業法人の試み~」(「週刊金曜日」2013年4月12日号)
【参考】
「【TPP】「限界農業」化の危機 ~農業の持続可能性~」
「【TPP】持続可能な農業を ~いま必要な政策~」
「【TPP】自民党の二枚舌、甘利大臣の無知」
「【TPP】国家主権の放棄 ~国民の知らないところで~」
「【TPP】条件闘争は不可、途中下車も不可 ~韓米FTA~」
「【TPP】1%の1%による1%のための協定 ~医療・食の安全~」
「【TPP】安部首相の二枚舌 ~信じがたい事態~」
「【TPP】医療制度崩壊を招くTPP参加」
「【TPP】その先にあるFTAAP ~国家ビジョンの不在~」
【TPP】米国製薬会社の要求 ~日本医療制度の営利化~
【TPP】蚕食される医療保険制度 ~審査業務という盲点~
【経済】TPP>米韓FTAの「毒素条項」 ~情報を隠す政府~
【経済】TPPは寿命を縮める ~医療と食の安全~
【経済】中野剛志の、経産省は「経済安全保障省」たるべし ~TPP~
【経済】中野剛志『TPP亡国論』
【震災】原発>TPP亡者たちよ、今の日本に必要なのは放射能対策だ
【経済】TPPをめぐる構図は「輸出産業」対「広い分野の損失」
【経済】TPPで崩壊するのは製造業 ~政府の情報隠蔽~
【経済】中国がTPPに参加しない理由 ~ISD条項~
【社会保障】TPP参加で確実に生じる医療格差
【社会保障】「貧困大国アメリカ」の医療 ~自己破産原因の5割強が医療費~
【経済】TPPとウォール街デモとの関係 ~『貧困大国アメリカ』の著者は語る~
【経済】TPP賛成論vs.反対論 ~恐るべきISD条項~
【経済】米国は一方的に要求 ~TPP/FTA~
【経済】伊東光晴の、日本の選択 ~TPP批判~
【経済】伊東光晴の、TPP参加論批判
【経済】TPPはいまや時代遅れの輸出促進策 ~中国の動き方~
【震災】復興利権を狙う米国
【読書余滴】谷口誠の、米国のTPP戦略 ~その対抗策としての「東アジア共同体」構築~
【読書余滴】野口悠紀雄の、日本経済再生の方向づけ ~外資・外国人労働力・TPP・法人税減税~
【読書余滴】野口悠紀雄の、中国抜きのTPPは輸出産業にも問題 ~「超」整理日記No.541~
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そんな条件に恵まれた地域ですら、農業の高齢化と後継者不足で耕地放棄地の拡大が止まらない。
農水省のデータ(2011年)によれば、ただでさえ減り続けている農業人口の実に6割が65歳以上の高齢者で占められている。
(2)むろん、生産者が手をこまぬいているわけではない。
「多古町旬の味産直センター」がスタートしたのは1987年2月のこと。高橋清・同センター代表理事(64歳)や地元民が試行錯誤の末、活路を見出したのは野菜を中心とした産地直送だった。いまでは農産物や加工品を卸す組合員150人、年商15億円の規模に成長している。
かじると芳醇な香りが鼻に抜け、舌には涼やかな甘さが残るミニトマト。市場に出すと買い叩かれることがあるが、産直で生協や消費者団体と取引することで収入が安定した。
(3)「食える農家」になることが、日本農業にとって最大の課題である後継者不足を解決するための回答となり、前提になる。
だが、逆に年々農家が「食えなくなる」要因は増えるばかりだ。
1990年代と比べると、農産物価格は3割近く下落。コストは上昇しているから、利益は実質的に半分になっている感じがする。コメなどは平均価格にすると同量のミネラルウォーターよりも安いぐらい。採算がとれないのに農家をつげ、というのは無理だ。【高橋代表】
だから、徹底して品質と安全性にこだわり、市場に出回る農産物の価格が高くなろうが低くなろうが、安定した値段で勝負できるようにした。そのため、「センター」として独自の有機配合肥料を作り、各農家へ配布するなど、あらゆる工夫をしている。生き残れない農家に後継者がいるはずもないのだから。【同】
(4)千葉県には「産直銀座」と呼ばれるほど、同じ試みは多い。
「センター」独自の強みは、消費者との徹底した交流だ。生産者にとって顧客の反応がわかる「顔の見える関係」にするための努力が続けられている。
<例1>市民農園「私の田んぼ」・・・・都会の消費者が水田の利用料を払い、年に数回多古町を訪れて田植え、稲刈り、秋の収穫祭に参加する。その間、生産者が水田を管理する。利用者は田仕事の経験を通じて、コメ作りのプロセスや水田の生態系、農業の大切さを学ぶ。収穫されたコメは、「センター」の精米施設からつきたての状態で送られる。利用者は数千人ほど。特に子どもと一緒に水田や農村を体験したい、という母親が増えている。
<例2>生協等の会合に出向き、農産物の試食会、国産大豆を使った味噌作りの指導、トウモロコシ狩りを始めとするさまざまなメニューが盛り込まれた「農村体験」募集。
・・・・美味しく安全な食べ物をこうやって生産している、という情報を生産者から消費者に伝えないかぎり、産直でも、消費者が商品を選ぶ基準は年だけになってしまう。交流して実際に農村を訪れて、ちゃんとした農産物なら適正価格がある、ということを理解してもらえれば、価格競争に巻きこまれない農業ができる。農家の経営も安定する。【竹盛智敬・「センター」総合直産課長】
(5)産直が農産物の流通に占める割合は数%程度。すべての農民が同じやり方をできるわけではない。農産物は「安ければいい」という消費者も圧倒的に多い。
要は、それぞれの条件に合ったやり方で各自がアイデアを出すしかない。【高橋代表】
□本誌取材班「価格競争に捲き込まれない農業へ ~千葉県多古町の農業法人の試み~」(「週刊金曜日」2013年4月12日号)
【参考】
「【TPP】「限界農業」化の危機 ~農業の持続可能性~」
「【TPP】持続可能な農業を ~いま必要な政策~」
「【TPP】自民党の二枚舌、甘利大臣の無知」
「【TPP】国家主権の放棄 ~国民の知らないところで~」
「【TPP】条件闘争は不可、途中下車も不可 ~韓米FTA~」
「【TPP】1%の1%による1%のための協定 ~医療・食の安全~」
「【TPP】安部首相の二枚舌 ~信じがたい事態~」
「【TPP】医療制度崩壊を招くTPP参加」
「【TPP】その先にあるFTAAP ~国家ビジョンの不在~」
【TPP】米国製薬会社の要求 ~日本医療制度の営利化~
【TPP】蚕食される医療保険制度 ~審査業務という盲点~
【経済】TPP>米韓FTAの「毒素条項」 ~情報を隠す政府~
【経済】TPPは寿命を縮める ~医療と食の安全~
【経済】中野剛志の、経産省は「経済安全保障省」たるべし ~TPP~
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【震災】原発>TPP亡者たちよ、今の日本に必要なのは放射能対策だ
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【社会保障】TPP参加で確実に生じる医療格差
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