(7)EUは、日本とは対照的に、国民の安全を考慮して、今も米国産牛肉の輸入を禁止している。
1990年代中頃、フランスで7、8歳の少女から18歳の子と同等のホルモンが検出されたり、初潮が異常に早く始まる、といった事例が欧州でたくさん見られた。このため、ホルモン過剰投与の米国産牛肉の輸入反対運動が起こった。当時、WTOの規則で、EUは米国産牛肉を全体の5%輸入する義務があった。しかし、反対運動が大きくなったので、EUは米国に罰金を払ってでも輸入を禁止している。
米国は、EUの農産物に課徴金をかけて報復したが、EUはそれでも禁止措置を解かなかった。
(8)しかるに、日本では逆に、規制が緩和されている。
(a)昨年2月、輸入牛肉の月齢を「20か月以下」から「30か月以下」に緩和して輸入を拡大。ホルモン投与は基本的に1回だが、肥育期間が長くなれば、さらに打つ。よって、30か月になると、残留ホルモン値がより増える可能性が高い。農水省は、米国産牛肉の残留ホルモンを測定しないが、「検出されて輸入禁止にしたら日米戦争だ、何もしないほうがいい」と言う。「食料が自給できないのは真の独立国ではない」(ド・ゴール・元フランス大統領)のだが。
(b)豚肉はもっと危険だ。米食品医薬品局は、米国で流通している豚肉の69%が抗生物質に耐性を持つ菌に汚染されている、と警告している。牛挽肉は55%、鶏肉は39%。昨年、中国産の「抗生物質漬け鶏肉」が話題になったが、中国産といい勝負なのだ。
(c)抗生物質を過剰投与した肉を食べると、人の腸内細菌が耐性化する。もし耐性菌が血液中に入ると、死に至ることもある。米国国内で200万人が抗生物質に耐性を持つ菌に感染し、年間23,000人が死亡している・・・・と昨年9月、米疾病対策センターは推計値を発表した。しかも、日本が豚肉を最も多く輸入しているのは米国で、年間28万トン(2013年)だ。全輸入量の38%にものぼる。
(9)TPPで最も大量に日本にやってくるのは、GM作物だ。大豆、トウモロコシ、小麦、etc.。
現在、日本が輸入するGM作物は、1,600万トン(2012年、推定)。
加工食品の8割にGM作物が使用されている。
日本は、世界一のGM作物輸入大国だ。
(10)GM作物は、基本的には2種類だ。
(a)殺虫成分を遺伝子内に組み込んだもの。
(b)除草剤に耐性のある遺伝子を組み込んだもの。
遺伝子組み換えの技術の安全性について、厚生労働省は「食品安全委員会において科学的に評価しているから問題ない」としているが、実はこれが極めて怪しい。
(11)世界のGM作物市場を牛耳るのは米モンサント社だ。同社は売上1兆5,200億円、GM作物の実に90%を独占する。モンサントは、除草剤「ラウンドアップ」も販売し、これを撒いても枯れないGM作物の種子をセットで販売することで莫大な利益を上げてきた。
ラウンドアップの主成分は化学物質「グリホート」だ。急性毒性がないため、日本ではホームセンターでも販売されている。が、あらゆる植物を根こそぎ枯らしてしまうほど猛毒だ。
日本では過去、大豆のグリホートの残留基準を6ppmに設定していた。だが、1999年に米国の要求で20ppmに上げた。
コメや落花生などはほとんどが0.1~0.2ppmなのだが、大豆とその他の穀類だけ20ppmにしたのは、米国産のGM大豆を輸入しやすくするためだ。
(12)残留農薬は、洗っても落ちない。穀物内部に浸透した農薬は、決して落ちることはない。
グリホートは、肝臓細胞破壊、染色体異常、先天性異常、奇形、流産のリスクがある。
残留濃度を上げたら人体にどんな影響があるか、といった実験はまったく行われていない。
ポップコーンやポテトチップなど、子どもが好きなスナック菓子にはGM作物が大量に使われているが、どこもグリホートの長期毒性試験をやってない。
(13)TPPに合わせて、グリホート以外の農薬も残留基準が緩和されている。
今年2月、厚労省はネオニコチノイド系農薬クロチアニジンの残留基準を50~2,000倍まで緩和した。これは、米国の基準値に合わせて、米国産作物を輸入しやすくするためだ。
他方、EUは、日本と真逆の動きをしている。
昨年012月、EUは、クロチアニジンの使用を全面禁止した。ミツバチの大量死の原因として疑われたからだ。
欧州食品安全機関は、「一部のネオニコチノイド系農薬に子どもの脳や神経などへの発達神経毒性がある」と警鐘を鳴らしている。
日本が緩和して、真っ先に犠牲になるのは日本の子どもたちだ。
(14)バイオ企業は、GM作物を食べても胃と腸ですべて消化されるから問題はない、という。これが「GM食品は安全」とされる「根拠」の一つだ。
だが、2002年、完全に分解されるかどうか、英国の研究グループが人工肛門患者を対象として人体実験した。結果、便内にはGM大豆のDNAが分解されないまま残っていた。さらに、ラウンドアップ耐性になった腸内細菌も検出された。
にもかかわらず、いまだに長期試験は行われていない。
(15)GM食品の恐ろしさを知るのは、それを開発したバイオ企業だ。
モンサントの食堂ではGM食品が禁止されていた。食堂の仕出しをしているグラナダ社は、GMへの懸念を受けて、GM大豆やトウモロコシは使わない、と伝えた。グラナダ社いわく、「私たちの出す料理を安心して食べていただけるようにするため」としている。【1999年12月21日付けAP通信】
□奥野修司+本誌取材班「米国産「危険食品」で子供が壊れる TPP成立で大量流入&規制撤廃」(「週刊文春」2014年4月17日号)
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【参考】
「【食】米国産「危険食品」が大量流入 ~TPPで規制撤廃~」
1990年代中頃、フランスで7、8歳の少女から18歳の子と同等のホルモンが検出されたり、初潮が異常に早く始まる、といった事例が欧州でたくさん見られた。このため、ホルモン過剰投与の米国産牛肉の輸入反対運動が起こった。当時、WTOの規則で、EUは米国産牛肉を全体の5%輸入する義務があった。しかし、反対運動が大きくなったので、EUは米国に罰金を払ってでも輸入を禁止している。
米国は、EUの農産物に課徴金をかけて報復したが、EUはそれでも禁止措置を解かなかった。
(8)しかるに、日本では逆に、規制が緩和されている。
(a)昨年2月、輸入牛肉の月齢を「20か月以下」から「30か月以下」に緩和して輸入を拡大。ホルモン投与は基本的に1回だが、肥育期間が長くなれば、さらに打つ。よって、30か月になると、残留ホルモン値がより増える可能性が高い。農水省は、米国産牛肉の残留ホルモンを測定しないが、「検出されて輸入禁止にしたら日米戦争だ、何もしないほうがいい」と言う。「食料が自給できないのは真の独立国ではない」(ド・ゴール・元フランス大統領)のだが。
(b)豚肉はもっと危険だ。米食品医薬品局は、米国で流通している豚肉の69%が抗生物質に耐性を持つ菌に汚染されている、と警告している。牛挽肉は55%、鶏肉は39%。昨年、中国産の「抗生物質漬け鶏肉」が話題になったが、中国産といい勝負なのだ。
(c)抗生物質を過剰投与した肉を食べると、人の腸内細菌が耐性化する。もし耐性菌が血液中に入ると、死に至ることもある。米国国内で200万人が抗生物質に耐性を持つ菌に感染し、年間23,000人が死亡している・・・・と昨年9月、米疾病対策センターは推計値を発表した。しかも、日本が豚肉を最も多く輸入しているのは米国で、年間28万トン(2013年)だ。全輸入量の38%にものぼる。
(9)TPPで最も大量に日本にやってくるのは、GM作物だ。大豆、トウモロコシ、小麦、etc.。
現在、日本が輸入するGM作物は、1,600万トン(2012年、推定)。
加工食品の8割にGM作物が使用されている。
日本は、世界一のGM作物輸入大国だ。
(10)GM作物は、基本的には2種類だ。
(a)殺虫成分を遺伝子内に組み込んだもの。
(b)除草剤に耐性のある遺伝子を組み込んだもの。
遺伝子組み換えの技術の安全性について、厚生労働省は「食品安全委員会において科学的に評価しているから問題ない」としているが、実はこれが極めて怪しい。
(11)世界のGM作物市場を牛耳るのは米モンサント社だ。同社は売上1兆5,200億円、GM作物の実に90%を独占する。モンサントは、除草剤「ラウンドアップ」も販売し、これを撒いても枯れないGM作物の種子をセットで販売することで莫大な利益を上げてきた。
ラウンドアップの主成分は化学物質「グリホート」だ。急性毒性がないため、日本ではホームセンターでも販売されている。が、あらゆる植物を根こそぎ枯らしてしまうほど猛毒だ。
日本では過去、大豆のグリホートの残留基準を6ppmに設定していた。だが、1999年に米国の要求で20ppmに上げた。
コメや落花生などはほとんどが0.1~0.2ppmなのだが、大豆とその他の穀類だけ20ppmにしたのは、米国産のGM大豆を輸入しやすくするためだ。
(12)残留農薬は、洗っても落ちない。穀物内部に浸透した農薬は、決して落ちることはない。
グリホートは、肝臓細胞破壊、染色体異常、先天性異常、奇形、流産のリスクがある。
残留濃度を上げたら人体にどんな影響があるか、といった実験はまったく行われていない。
ポップコーンやポテトチップなど、子どもが好きなスナック菓子にはGM作物が大量に使われているが、どこもグリホートの長期毒性試験をやってない。
(13)TPPに合わせて、グリホート以外の農薬も残留基準が緩和されている。
今年2月、厚労省はネオニコチノイド系農薬クロチアニジンの残留基準を50~2,000倍まで緩和した。これは、米国の基準値に合わせて、米国産作物を輸入しやすくするためだ。
他方、EUは、日本と真逆の動きをしている。
昨年012月、EUは、クロチアニジンの使用を全面禁止した。ミツバチの大量死の原因として疑われたからだ。
欧州食品安全機関は、「一部のネオニコチノイド系農薬に子どもの脳や神経などへの発達神経毒性がある」と警鐘を鳴らしている。
日本が緩和して、真っ先に犠牲になるのは日本の子どもたちだ。
(14)バイオ企業は、GM作物を食べても胃と腸ですべて消化されるから問題はない、という。これが「GM食品は安全」とされる「根拠」の一つだ。
だが、2002年、完全に分解されるかどうか、英国の研究グループが人工肛門患者を対象として人体実験した。結果、便内にはGM大豆のDNAが分解されないまま残っていた。さらに、ラウンドアップ耐性になった腸内細菌も検出された。
にもかかわらず、いまだに長期試験は行われていない。
(15)GM食品の恐ろしさを知るのは、それを開発したバイオ企業だ。
モンサントの食堂ではGM食品が禁止されていた。食堂の仕出しをしているグラナダ社は、GMへの懸念を受けて、GM大豆やトウモロコシは使わない、と伝えた。グラナダ社いわく、「私たちの出す料理を安心して食べていただけるようにするため」としている。【1999年12月21日付けAP通信】
□奥野修司+本誌取材班「米国産「危険食品」で子供が壊れる TPP成立で大量流入&規制撤廃」(「週刊文春」2014年4月17日号)
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【参考】
「【食】米国産「危険食品」が大量流入 ~TPPで規制撤廃~」