語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【本】新社会人のために ~不安な時代に生きる本6冊~

2014年04月07日 | 社会
(1)「雇用破壊の進む社会で」【雨宮処凜】
 (a)東海林智『15歳からの労働組合入門』(毎日新聞社、2013)
 (b)小熊英二『社会を変えるには』(講談社現代新書、2012)
 (c)AKIRA『COTTON100%』(現代書林、2013)

 「自分で自分の身を守る方法」・・・・今、社会に出ようとする若者にとって、もっとも必要な情報だ。
 だが、多くの若者は労働基準法や労働組合について、何一つ知らされていない。
 (a)は、タイトルのとおり、若者向けの「労働問題」入門書だ。紹介されるケースはどれも過酷だが、解決策が示されている。政治によって雇用政策がいかに変えられてきたか、に係る記述も興味深いと思う。
 こんな「雇用破壊」を進めてきた政治に対して疑問が湧いたら、その時にぜひ読んでほしいのが(b)だ。3・11以降の脱原発デモを入口として、今、この国で一体何が起きているのか、歴史を振り返りながら分析する。
 「日本企業」や「日本の社会」に疲れた時、読んでほしいのが(c)だ。逃げろ! 落ちろ! 目覚めろ! 旅立て! 堂々と間違えろ! 元ジャンキーの著者の「どん底の旅」の記録は、きっとあなたが生きる支えになるはずだ。

         

(2)「自由を失うという試練」【佐高信】
 (a)黒井千次『働くということ』(講談社現代新書、1982)
 (b)雨宮処凜『生き地獄天国 雨宮処凜自伝』(ちくま文庫、2007)
 (c)佐藤優『獄中記』(岩波現代文庫、2009)
 
 会社に入ると、学生時代と何が変わるか。黒井千次・作家/元富士重工社員は、(a)において、入社後の「生活上の一大革命」を4点を挙げた。
 ①「猶予の匂い」がつきまとっている学生が、稼ぐことと支払うことのバランスを自分でとらなければならない生活者へと変貌する。
 ②時間の自由を失う。朝早く起きて、夕方まで自分の時間がなくなる生活に入る。
 ③人間関係の自由を失う。企業に入ると、嫌いな人間とも付き合わなければならない。
 ④住む土地の自由を失う。事業所のあるところなら、どこへでも行かなければならない。
 これらの不自由を経験することで、何を得ることになるか。
 いずれにせよ、生きることはもがくことだが、(b)と(c)を試練の書として推薦する。

         

□記事「編集委員オススメ 不安な時代に生きる本6冊」(「週刊金曜日」2014年4月4日号)
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