語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【心理】女性自身による女性差別、有色人種自身による有色人種差別

2014年04月13日 | 心理
 西水美恵子・元世界銀行副総裁は、毎日新聞の「時代の風」で、「女性の社会進出」と題し、次のように書いた。

----------------(引用開始)----------------
 (前略)
 制度化された差別は、トップの確固たる意志があれば解消できる。難しいのは、目に見えない無意識的差別。本人が自覚しない差別意識は、人間なら誰でも持つ。自分も例外ではないと初めて肌で知った時は、計り知れない打撃を受けた。

 社会心理学で開発された潜在的連合テストという手法がある。Implicit Association Test を略してIAT。人間が社会的な対象に関して無意識に持つ態度を測定するテストだ。手法が簡単で、結果の信頼性が高く妥当性に優れていることから、教育や経営など、さまざまな分野で応用されてきた。
 その簡易版を、世界銀行の管理職研修で受けたことがある。ふた昔ほど前、女性職員に対する差別が問題になり、改革を手がけ始めていた頃だった。
 絵2枚1組を1枚ずつ見て、いいと感じたほうを選ぶだけのテストだった。絵を掲げた人が登場して、あっという間に退場し、もう1枚の絵を掲げた人が同じように現れて、またすぐ下がる。研修生は、選んだ絵を用紙に記入し、次の1組を見る。それがあきるほど幾度も繰り返された。
 結果の発表となり、最初の1組の得点が公表されて2枚の絵が初めて同時に並んだ。その瞬間、うめくようなどよめきが起きた。2枚の絵は同じ絵だった。誰一人それを認知せぬまま1枚の絵を選んでいたのだ。
 その理由は、1組ごとに絵が現れ、結果が発表されるたびに明確になり、研修生を打ちのめした。全員が、絵ではなく、絵を掲げた人を選んでいたのだ。私自身も含めて、研修生の大半が、女性より男性が掲げた絵を選び、アジア・アフリカ系の有色人種より白人が掲げた絵を選んでいた。
 自分の幽霊を見たような思いに鳥肌が立った。吐き気を覚えた同僚もいた。キューバと北朝鮮を除く全世界の加盟国国民が働く世界銀行。その多民族組織を率いる管理職の心に、おのおのの性別や人種に関わらず女性と有色人種への偏見が潜む。この事実を無視したらリーダー失格、真っ正面から向き合うしかないと、皆で眠れない一夜を語り明かした。管理職が共有したこの恐ろしい体験は、女性問題解消に本腰を入れる原動力のひとつとなった。
 (後略)
----------------(引用終了)----------------

 世界銀行は、全職務階級において女性を増やす戦略を採った。生え抜きの女性が多数進出するまで想定外の時間がかかり、脱線の可能性もある。内外から人材を登用し、既存文化に負けないよう組織的に支援する作戦を選んだ。

□西水美恵子(元世界銀行副総裁)「女性の社会進出 ~時代の風~」(毎日新聞 2014年3月2日)
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