(1)フランスの地方選挙の仕組みは複雑だ。
(a)比例代表制で37,000人の市区町村議員を選ぶ。
(b)市区町村議員が互選で首長を決める。
(c)第1回投票において比例代表で過半数を獲得する政党、または複数の政党によって構成されるブロックがない場合は、決戦投票が行われる。
(2)3月23日の第1回投票において、左派(社会党が中心)の得票率は38%、右派(保守系の民衆運動連合(UMP)など)は47%だった。移民排斥を掲げる極右の国民戦線(FN)が5%を獲得した。
FNは、前回の選挙(2008年)で1%未満だったから、大躍進だ。
決選投票は3月30日に行われた。FNは7%を獲得した。左派は41%、右派は46%だった。
今回の地方選挙の結果、FNはフランス政界における第3党となった。
ウクライナの新政権にもネオナチの「スボボダ(自由)」が入っている。この流れは、今後、他のヨーロッパ諸国にも拡大するだろう。
(3)マリーヌ・ル・ペン・FN党首は、1968年8月5日生まれ、現在45歳。今後大統領になる可能性も排除されない。2012年の大統領選挙の第1回投票では17.9%を獲得した。
ジャン=マリー・ル・ペン・前FN党首(マリーの父)は、2002年の大統領選挙の第1回投票で、保守おう系のシラク(19.71%)に次ぐ16.8%もの得票率を得て、決選投票に進んだ。決選投票では、シラクが圧勝した(82%対18%)。このときル・ペンを支持したのは失業者、肉体労働者、若者だった。
(4)極右勢力は、論理よりも心情や行動を重視する。マリーヌも、
(a)妊娠中絶と同性愛に反対を表明している。
(b)反イスラムの立場を前面に押し出し、父の展開した反ユダヤ主義の主張については抑制している。
(c)どのような発言をすれば、FNの支持基盤を拡大できるか、入念に計算した上で、極右的な発言をしている。
(5)資本主義社会は、必然的に強者と弱者を生み出す。強者は保守党(新自由主義的な弱肉強食の原理に基づく)を支持する。
相対的な弱者が、社会民主主義的政党を支持する。
しかし、社会的に最も弱い立場に置かれた人々は、労働組合や社会民主主義的政党に加わらずに孤立し、社会に対する不満と苛立ちを深めている。こういう人たちを政治的に惹きつけようと、極右政党と極左政党が試みる。
ドイツでは、昨年9月の総選挙で、極左の左翼政党が630議席中64議席を獲得した。キリスト教民主・社会同盟と社会民主党が大連立を組み、巨大与党となっている状況で、左翼党は野党第一党だ。
フランスでは、既成の政治勢力に飽き足りず、「何かに対して怒っている」人々が極左ではなく極右のFNを支持している。
(6)マリーヌは、パリ大学を卒業し、弁護士資格を持つ知識人だ。父のFNを引き継ぎ、彼女は家業として極右政治活動を行っているのだ。
グローバリゼーションの流れが進む中、発展途上国から先進国への移民が増えるのは不可避だ。社会矛盾の原因が移民である、という言説を展開することが、「何かに対して怒っている」人々の支持を得る効率的方法だ・・・・とマリーヌは計算しているのだ。
□佐藤優「極右が躍進 いまフランスで起きていること ~佐藤優の人間観察 第63回~」(「週刊現代」2014年4月26日号)
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(a)比例代表制で37,000人の市区町村議員を選ぶ。
(b)市区町村議員が互選で首長を決める。
(c)第1回投票において比例代表で過半数を獲得する政党、または複数の政党によって構成されるブロックがない場合は、決戦投票が行われる。
(2)3月23日の第1回投票において、左派(社会党が中心)の得票率は38%、右派(保守系の民衆運動連合(UMP)など)は47%だった。移民排斥を掲げる極右の国民戦線(FN)が5%を獲得した。
FNは、前回の選挙(2008年)で1%未満だったから、大躍進だ。
決選投票は3月30日に行われた。FNは7%を獲得した。左派は41%、右派は46%だった。
今回の地方選挙の結果、FNはフランス政界における第3党となった。
ウクライナの新政権にもネオナチの「スボボダ(自由)」が入っている。この流れは、今後、他のヨーロッパ諸国にも拡大するだろう。
(3)マリーヌ・ル・ペン・FN党首は、1968年8月5日生まれ、現在45歳。今後大統領になる可能性も排除されない。2012年の大統領選挙の第1回投票では17.9%を獲得した。
ジャン=マリー・ル・ペン・前FN党首(マリーの父)は、2002年の大統領選挙の第1回投票で、保守おう系のシラク(19.71%)に次ぐ16.8%もの得票率を得て、決選投票に進んだ。決選投票では、シラクが圧勝した(82%対18%)。このときル・ペンを支持したのは失業者、肉体労働者、若者だった。
(4)極右勢力は、論理よりも心情や行動を重視する。マリーヌも、
(a)妊娠中絶と同性愛に反対を表明している。
(b)反イスラムの立場を前面に押し出し、父の展開した反ユダヤ主義の主張については抑制している。
(c)どのような発言をすれば、FNの支持基盤を拡大できるか、入念に計算した上で、極右的な発言をしている。
(5)資本主義社会は、必然的に強者と弱者を生み出す。強者は保守党(新自由主義的な弱肉強食の原理に基づく)を支持する。
相対的な弱者が、社会民主主義的政党を支持する。
しかし、社会的に最も弱い立場に置かれた人々は、労働組合や社会民主主義的政党に加わらずに孤立し、社会に対する不満と苛立ちを深めている。こういう人たちを政治的に惹きつけようと、極右政党と極左政党が試みる。
ドイツでは、昨年9月の総選挙で、極左の左翼政党が630議席中64議席を獲得した。キリスト教民主・社会同盟と社会民主党が大連立を組み、巨大与党となっている状況で、左翼党は野党第一党だ。
フランスでは、既成の政治勢力に飽き足りず、「何かに対して怒っている」人々が極左ではなく極右のFNを支持している。
(6)マリーヌは、パリ大学を卒業し、弁護士資格を持つ知識人だ。父のFNを引き継ぎ、彼女は家業として極右政治活動を行っているのだ。
グローバリゼーションの流れが進む中、発展途上国から先進国への移民が増えるのは不可避だ。社会矛盾の原因が移民である、という言説を展開することが、「何かに対して怒っている」人々の支持を得る効率的方法だ・・・・とマリーヌは計算しているのだ。
□佐藤優「極右が躍進 いまフランスで起きていること ~佐藤優の人間観察 第63回~」(「週刊現代」2014年4月26日号)
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