語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【読書余滴】ピエール・ブルデューの、科学論文の文章における建前と本音(対照表) ~科学の科学~

2011年01月26日 | 批評・思想

(1)【建前】従前から知られているように・・・・
   【本音】文献を調べる面倒を省いた。

(2)【建前】これらの問題に決定的な解答を与えることは不可能であったが・・・・
   【本音】実験はうまくいかなかった。しかしせめて論文一本は書けると考えた。

(3)【建前】サンプルのうち三つを選んで詳しく研究した・・・・
   【本音】他のサンプルの結果は無意味なので無視した。

(4)【建前】組み立て中に事故で損傷したので・・・・
   【本音】床に落ちた。

(5)【建前】理論的・実践的にきわめて重要な・・・・
   【本音】わたしにとって好都合な

(6)【建前】・・・・と示唆されている。/・・・・と思われる。
   【本音】わたしは・・・・と考える。

(7)【建前】・・・・と一般に認められている。
   【本音】他の連中もそう考えている。

   *

 以下、「この表にはたてまえの文章の偽善を暴露するユーモア効果があります。しかし、行為者が自分の実践についてもちうる経験の二重の真理にはある普遍性があります。ひとは自分のすることの真実(たとえば、ある法的決定を決定する理由あるいは原因の、程度の差はあるが、恣意的な性格、いずれにせよ偶然的な性格)を知っています。しかし、自分がすることについての公式の考え方と、あるいは自分が自分についてもっている考え方と規則にかなった関係にあるためには、その決定がいくつかの理由によって、それも可能なかぎり高邁な(そして合法的な)理由によって動機づけられているように見えなければなりません。たてまえの言説は偽善的です。しかし『シックなラディカリズム』への傾斜は行為者自身のうちに二つの真実が、多かれ少なかれ困難をともないながら、共存することを忘れさせてしまいます(この真理を学ぶのにわたくしはたいへんな苦労をしました。パラドクサルなことですが、わたくしはこの真理をカビリアの人々のおかげで学びました。それはおそらく、自分の集合的偽善よりは他者の集合的偽善を理解する方がやさしいからでしょう)。」云々と続く。

【参考】ピエール・ブルデュー(加藤晴久・訳)「しっかり守られた公然の秘密」(『科学の科学 -コレージュ・ド・フランス最終講義-』、藤原書店、2010)
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