伊坂幸太郎も星新一のあのショートショートを読んだだろうか。
ある人物が病院のなかにいて、塀の外では群衆が騒いでいる。
「彼らは何を叫んでいるんです?」
患者は問い、白衣の男は答える。
「君を解剖しろ、と」
「なぜ?」
「君の身体には、現在の食糧難を一気に解決する秘密が隠されているらしい」
「では、なぜあなた方はわたしを解剖しないんです」
「よく考えてみたまえ。生きた君を解剖し、世界が救われたとしよう。ひとりの人間を死に至らしめて得られたその状況に、世界は耐えられるのか」
思い切り脚色してあります(笑)。星新一はもっと邪悪な側面を持っていたはずだし、「海と毒薬」への返歌の意味合いもあったかもしれない。
伊坂のめざした方向は、しかし星に似ているのだと思う。世界は救われなければならない。でもそれは、正しい方法でなければならないと。
この作品における世界を救う登場人物それぞれの行動は、正しいかどうかはわからない。しかし善なる思いから発していることだけは確か。そして、その結果に彼らが思い悩むあたりに共感できる。ペナルティキック、成功です。
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PK 価格:¥ 1,260(税込) 発売日:2012-03-08 |
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