事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「PK」 伊坂幸太郎著 講談社刊

2012-08-11 | 本と雑誌

20120418_2642858 伊坂幸太郎も星新一のあのショートショートを読んだだろうか。

ある人物が病院のなかにいて、塀の外では群衆が騒いでいる。

「彼らは何を叫んでいるんです?」

患者は問い、白衣の男は答える。

「君を解剖しろ、と」

「なぜ?」

「君の身体には、現在の食糧難を一気に解決する秘密が隠されているらしい」

「では、なぜあなた方はわたしを解剖しないんです」

「よく考えてみたまえ。生きた君を解剖し、世界が救われたとしよう。ひとりの人間を死に至らしめて得られたその状況に、世界は耐えられるのか」

思い切り脚色してあります(笑)。星新一はもっと邪悪な側面を持っていたはずだし、「海と毒薬」への返歌の意味合いもあったかもしれない。

伊坂のめざした方向は、しかし星に似ているのだと思う。世界は救われなければならない。でもそれは、正しい方法でなければならないと。

この作品における世界を救う登場人物それぞれの行動は、正しいかどうかはわからない。しかし善なる思いから発していることだけは確か。そして、その結果に彼らが思い悩むあたりに共感できる。ペナルティキック、成功です。

PK PK
価格:¥ 1,260(税込)
発売日:2012-03-08
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