読書、DVD、YouTubeで伊集院光、テレビで野球。わたしがうちに帰ってからの娯楽は、まあこんなところだ。近ごろ挫折気味とはいえ、禁酒まで始めてしまったので、夜が長くて長くて……になるはずなのに読書量がむしろ落ちているのは、酒が入ったほうが夜更かしできる身体だということか。単なるアル中ですか。アル中ですけどなにか。
そんななか、最も優先されるのは有栖川有栖のミステリだ。特に作家アリスシリーズと呼ばれる火村准教授もの。早く読みたくて他の娯楽を放り出して熱中。去年は斎藤工(火村)と窪田正孝(アリス)でドラマ化されたこともあり、旧作もどんどん書店に並ぶようになった。うれしい。
彼の作品の特徴として、いわゆる“新本格”作家らしく、ミステリであること、ミステリを書き続けることに意識的な点が挙げられる。特に作家アリスは、語り手がミステリ作家という設定もあって、ミステリ論の色がとても強く、物語への導入としてとても興味深い。
「狩人の悪夢」は、火村とアリスもののまっさらな新作。登場人物のひとりが(ミステリに色気を見せている)ホラー作家ということもあって、ミステリ論爆発。そしてそんなやりとりのなかで、いつのまにか密室殺人が形成されているあたり、おみごと。有栖川が同世代同学年であることを差し引いたってやめられないわけだ。誰が狩人だったのかというひっかけには誰もがうなるはず。
読売新聞で宮部みゆきはこう評している。
「動機については無視して考えました。これは私のいつものやり方です」
実は、火村自身が心の内に不穏な犯罪の動機を秘めている。過去の出来事らしく、詳細は未だ不明。無駄に語らず語らせない探偵役のこの台詞は「犯罪という事象に至る人間の業を安易に物語化しない」という宣言だ。しびれる。
……こういう書評に、わたしはしびれる。
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