モデル小説。
粉飾決算、利益操作、原発企業の買収により倒産寸前……とくればもちろん東芝の一連の不祥事が描かれていると誰だって思う。そのとおりです。
運が悪かった、と考える人は今でも社内外にいるのだろう。高い買い物だとされたウエスチングハウスが実は不良債権の塊で、しかも東日本大震災によって原子力事業そのものが立ち行かなくなったわけだから。
でも、冷静な眼でWH社を評価できなかったことは確かだし、資源のほとんどを原発に集中してしまうなど、わたしには経営の才が最初からなかったのだとしか。
社員が「光るぅ、光る(東芝)」とCMソングをつぶやく場面がある。百年以上も続く、文句なく一流企業が、社員が愛しているにもかかわらずなぜ看板が薄汚れる結果になったか。この書では、その真の回答を経営者の質に求めている。さすがモデル小説。
たいした功績もないのに、政府の諮問会議などに積極的に参加し、政権との距離の近さを利用して頂点まで登りつめた“天皇”。
その天皇の指名を受けてトップとなったものの、社内政治のために原発に突き進んでしまった前社長。
なぜできないんだ、と部下を恫喝し、恐怖政治で社を萎縮させる現社長……
結果としてご存じのような結果になったわけだから、完全にフィクションとも言い切れないんでしょう。希望の星だった東芝メモリを売却せざるを得ず、むかしは一社提供だったサザエさんのスポンサーから降り……先行きはかなり暗い。
日立を強烈に意識し、数字だけを追い求めた結果がこれ。この小説が事実に近いとすれば、やはり若手が東芝をどう変革できるかが勝負の分かれ目か。
創業者のからくり儀右衛門(初代田中久重)のお話は子どものころにNHKのドラマでおなじみだし、67年の「光速エスパー」だって東芝のマスコットキャラじゃないか。がんばれ東芝。原発がらみだとして清志郎の曲を東芝EMIが発売中止にしたことの当然の報いだなんて思ってないからな、ちょっとしか(笑)。
経営の才がなっかったんですかねえ。
シャープは誰か小説にしていませんかねえ。
台湾のカリスマに買われて正解だった
と総括されるとちょっとくやしいですけどね。