世にお姫さま女優ということばがある。文句なく美人で、所属する映画会社に愛され続ける人たちしか受けることができない称号。しかし演技力に難がある(笑)という共通点もある。高田美和とか、丘さとみとか。若い読者は知らないですか。そうですか。
東宝という会社は、いまは若い観客向けに恋愛映画を連発しているが、構えの大きな作品が多かったので、専属女優は添えもの扱いの傾向にあった。で、彼女たちはおおむね(山口百恵をのぞいて)セックスを感じさせないのだ。近年でいえば沢口靖子や古手川祐子、昔なら司葉子とか星由里子とかね。黒澤明が大映で京マチ子を使って「羅生門」を撮り、古巣の東宝でも彼女を切望したのにかなえられなかった事例は、東宝に京マチ子のような妖艶な女優に枯渇していたことを物語っている。
オリジナル「隠し砦の三悪人」(黒澤明監督)のお姫さま、上原美佐はその典型のような女優だった。それはもうびっくりするような美貌と、デビュー作(まだ短大生だった)なものだからセリフは棒読み。黒澤が女優を描くのが苦手なこともあってセクシーさはかけらもなかった。でも自分の才能に見切りをつけてさっさと引退してしまったのは残念だったなあ(ってリアルタイムでは知らないわけですけど)。
さて、リメイク版の長澤まさみはどうだろう。「世界の中心で、愛をさけぶ」を見ていないのでうかつなことは言えないけれど、彼女を絶世の美女だと思う人はまずいないと思う。巨乳であることは確かだが、セクシーかどうかも微妙。でも、観客自身に「この子は美しいんだ」と誤解させたくなるような雰囲気があるので、女優としての華はあるんだと思う。東宝が掌中の玉として大事にするわけだ。
さて、「椿三十郎」につづいて黒澤明の名作をリメイクした第二弾。「椿~」のときも感じたけれど、オリジナルを見ていない人はつくづく幸せだと思う。徹底的に練りあげられた脚本と豪快な殺陣。「裏切り御免!」という名セリフ(クレヨンしんちゃんでも引用されていましたね)に代表される後味のよさ。あれをこれから楽しむことができるのだから。今回はあの名作をかなりひねってつくってあり、それはそれで成功している。戦国時代にそんな民主国家と某独裁国家の激突がありえたのか、とつっこまれることは承知のファンタジー。「スター・ウォーズ」のC-3POとR2-D2コンビがオリジナルの藤原釜足と千秋実をモデルにしたのは有名。その返歌として、リメイクでは椎名桔平が某キャラをモデルに気持ちよさそうに演じています。
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