かつて小林信彦が、娘たちを育てるときにほんとうにお世話になったと述懐していたのが松田道夫氏の「育児の百科」をはじめとした諸作。そして、その育児のプロの息子がこの松田道弘さんだ。マジック研究の第一人者。若いころから彼の著作にはたいそう楽しませてもらっている。
この書は、日本で唯一のマジック専門誌「The Magic」に連載された、くせの強いマジシャンの人物伝。怪異をおこなうことで怖れられ、中世において停滞していたマジックが、19世紀に爆発的に人気を集め、そして20世紀にアマチュアたちに広がっていった経緯が、例によってわかりやすい語り口で披瀝される。
大向こうをねらったイリュージョンがわたしは趣味ではなく、少人数の観客の前で行われるクロースアップマジックが大好きなので、いまもなお新しいトリックが次々に生まれ、同時に科学の進歩のせいで消えていくあたり、ぞくぞくするほど面白いっす。
かの有名なインドにおけるロープのぼりを、実は誰も見たことなどない(イブン・バトゥータの著作で述べられているだけ)など、びっくりな事実もてんこもりです。マジックファンならずとも、ぜひ。
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