角田光代著『わたしの容れもの』(2016年5月25日幻冬舎発行)を読んだ。
宣伝文句は以下。
人間ドックの結果だけで話が弾むことを知る、中年という時代。カラダは若い頃の精彩を欠き、少しずつ老いへ向かう変化を見せます。それは悲しいことであるはずなのに、でも、なぜか、変化はおもしろい! と、作家の角田光代さんがワクワクした気持ちで、ご自身の変わりゆくカラダを綴っていったのが本書です。 四〇歳を過ぎてはじめて豆腐の美味しさを知ったり、深夜のラーメンで増えた二キロの体重が減らなさを嘆いたり、しみとしわ、皮がしなっとした手の甲をしみじみと眺めたり、圧倒的に低下した読書体力や集中力に哀しくなったり……。その一方、運動を始める人が周りで俄然増えるのも中年世代でもあるのです。 わたしの入った容器――カラダ──がまるごと愛しくなる、共感必至のエッセイ集
身体の老化に兆しを感じた40代半ばの角田さんが、32編のエッセイで語る。
ただただ感慨をもって、霜降り肉より赤みの肉が好きになった事実を受け止める。徹夜ができなくなった。覚えられなくなった。ちょっとやそっとじゃ体重が減らなくなった。豆腐を美味しいと感じるようになった。集中力が続かなくなった。
同世代の友人知人と話すと、健康の話題が俄然多くなった。
腰の痛みをあらわす単位をズンとするとして、ぎっくり腰が50ズンだったら、この痛み≪階段を5,6段落ちて腰を打った≫は200ズン。
角田さんは33歳でボクシングジムに通い始め、37歳でランニングを始めた。20代の女の子が言った。
「なんでみんな、そんなに運動してるんですか。私、走るなんてまっぴらごめん・・・」
・・・
「そうなんだ、若い人は運動なんかしなくていいんだ、中年になってすればいいんだ」
二十代のときには、自分が五十歳になるなんて思いもしなかった。それとはまったく異なる気持ちで、きちんと六十代、七十代になれるだろうかと、もうじき五十歳の私は思っている。
私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)
「でもね、角田さん、そんなのまだまだなんだよ。老化の兆しともいえないよ。」と70代の私は余裕をこいて教えてあげたい。角田さんのぼやきやら、驚きなどを読むと、「ふむふむ、それで?」と、かわゆくなってしまう。
角田光代(かくた・みつよ)
1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。
90年「幸福な遊戯」で「海燕」新人文学賞を受賞しデビュー。
96年「まどろむ夜のUFO」で野間文芸新人賞、
98年「ぼくはきみのおにいさん」で坪田譲治文学賞、
「キッドナップ・ツアー」で99年産経児童出版文化賞フジテレビ賞、
2000年路傍の石文学賞
2003年「空中庭園」で婦人公論文芸賞
2005年「対岸の彼女」で第132回直木。
2006年「ロック母」で川端康成文学賞
2007年「八日目の蝉」で中央公論文芸賞
2011年「ツリーハウス」で伊藤整文学賞
2012年「 紙の月 」で柴田錬三郎賞、「かなたの子」で泉鏡花賞
2014年「私のなかの彼女」で河合隼雄物語賞
をいずれも受賞
2009年ミュージシャン河野丈洋と再婚。習い事は英会話とボクシング。趣味は旅行で30ヶ国以上に行った。
その他、「水曜日の神さま」「森に眠る魚」「何も持たず存在するということ」「マザコン」「予定日はジミーペイジ」「恋をしよう。夢をみよう。旅にでよう。 」「私たちには物語がある」「 愛がなんだ 」「 ひそやかな花園 」「 よなかの散歩」「 さがしもの 」「 彼女のこんだて帖 」「 かなたの子 」「 幾千の夜、昨日の月 」「 曽根崎心中 」「 それもまたちいさな光 」「空の拳」「私のなかの彼女 」
その他、共著「 口紅のとき」「 異性 」「西荻窪キネマ銀光座」