hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

角田光代「何も持たず存在するということ」を読む

2009年02月09日 | 読書2

角田光代著「何も持たず存在するということ」2008年6月、幻戯書房発行を読んだ。

角田さんの86編の過去のエッセイを集めた本だ。初出はそれぞれバラバラで、新聞や雑誌など掲載誌をとっておかない角田さんに代わって、この本の編集者がどこからか集めたものだ。

帯には、「へらへらした大人になりたい。大仰さがまるでない大人に。」とある。

出版社の幻戯書房のホームページにはこうある。
 
話すのが苦手で幼稚園では内向的と見られていていた少女は、文字に触れるや文章を書くという行為に魅せられ、7歳のときに志したとおり、23歳で作家になる。
とにかく書いた、読んだ、旅した。芥川賞、三島賞の候補には何度も上った。
そして37歳、直木賞受賞。

家族をめぐり、自著をめぐり、旅をめぐって各紙誌に寄せた文章を精選。作家として大成するまでの軌跡であるとともに、作家の等身大の思いの数々。

幻戯書房(げんきしょぼう)は、歌人で作家の辺見じゅんが、父であり、角川書店の創立者である角川源義の創業の精神を受け継ぎ、設立した出版社です。




角田光代さんは、1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部卒。1990年「幸福な遊戯」で海燕新人文学賞を受賞する。野間文芸新人賞、婦人公論文芸賞、直木賞(2005年)、川端康成文学賞、中央公論文芸賞受賞。著書多数。
なお、角田光代さんは、2006年芥川賞を受賞した伊藤たかみさんと6年間の同棲を経て2005年春に婚姻届を出した。



私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)

角田さんらしく、身近な話題を取り扱い、読みやすいが、題名ほど濃い内容ではない。ただ、角田ファンには彼女自身のことが多く語られているので興味深いだろう。
書くこと以外まったくだめな少女時代、大人の編集者に囲まれおどおどするデビューしたての頃のことが赤裸々に語られる。もっとも嘘つくことを商売とする作家の話だから、舌出しながら書いているのかも?

2003年に日経新聞のプロムナードに連載したものが前半に26編あり、ここが面白い。
また、角田さんは15年の作家生活で、11回候補となるが落選し、6回受賞したそうだが、最後の方にある受賞前後の裏話はドキドキ感が出ていて興味深く読んだ。

角田さんが、賞を受賞したと真っ先に母親に電話しても、お母さんは、あらそう、よかったじゃないとその程度の反応だった。娘にはごく普通に結婚して欲しかったのでそうなのだろうと角田さんは思っていた。
そのお母さんが、直木賞に落選したとき、笑って言った。「落ちたって電話もらって、仏壇の鐘を思いっきり鳴らしちゃった。おとうさん、なんで娘を応援しないのって、八つ当たりよ」
そして、お母さんの葬儀の4日後に直木賞受賞の報せを受けた。「へらへらした大人になり、大仰さがまるでない大人になった」角田さんが泣いてしまうわけだ。





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