hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

角田光代『私のなかの彼女』を読む

2014年01月05日 | 読書2
角田光代著『私のなかの彼女』(2013年11月新潮社発行)を読んだ。

80年代後半、バブル期に向かうとき、本田和歌は冴えない大学生だったが、ハンサムで気の利いた先輩の内村仙太郎と付き合っていた。在学中からアーティストとして活躍する彼に連れられて都会的なことをいろいろ初経験する。彼と結婚し暮らすことが、その頃、和歌の唯一やりたいことだった。

この本は、「祖母は醜女だった」と母が祖母タエを辛辣に語ることで始まる。そして、和歌が自宅の蔵からタエがかつて出版した本を見つけたことから、作家人生へのきっかけとなっていく。
和歌は就職し、祖母の過去を調べながら、仙太郎の背中を追いかけるように小説らしきものを書く。やがて新人賞への投稿小説が認められ、わき目も振らず小説書きに熱中するようになると、一緒に暮らすようになった仙太郎と家事の分担などで気持ちのすれ違いが起こる。
「もしかして、別れようって言ってる?」ごくふつうに恋愛をしていたはずなのに、そして、全力を注げる仕事を見つけ、ようやく彼に近づけたと思ったのに、どこかで二人の関係はねじ曲がってしまった。

初出:「新潮」2010年2月号~2011年7月号のタイトル「空に椅子」を改題、大幅加筆、修正



私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

角田さんの本を読み過ぎたので、点が辛くなった。面白くないわけではない。
まるで自叙伝かと思うぐらい若き日の角田さんを思わせる話が続く。角田ファンには興味深々だろう。
賞を受賞することによってどんな風に仕事が増えていくのか、対談や、エッセイ、雑誌のコラムの依頼など小説以外の仕事が増えていく様子など新人作家の状況はリアルっぽい。

東京で暮らしはじめて三年弱、和歌はずっと、世のなかというものは自分を含まないところで成り立っているように感じることが、よくあった。
和歌にとって、自分がいる場所が東京なのではなく、自分が遠くから眺めているのが東京だった。
私は生まれも育ちも東京だが、華やかな場所はほとんど知らない。学生時代も、田舎から出て来た友人は華やかな場所で派手に遊んでいたが、私は東京といっても西のはずれをウロチョロしていただけだった。ましてや年とった今は、TVなどで見る東京は眺めるところそのものだ。



角田光代(かくた・みつよ)
1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。
90年「幸福な遊戯」で「海燕」新人文学賞を受賞しデビュー。
96年「まどろむ夜のUFO」で野間文芸新人賞、
98年「ぼくはきみのおにいさん」で坪田譲治文学賞、
「キッドナップ・ツアー」で99年産経児童出版文化賞フジテレビ賞、
2000年路傍の石文学賞を受賞。
2003年「空中庭園」で婦人公論文芸賞を受賞。
2005年「対岸の彼女」で第132回直木賞。
2006年「ロック母」で川端康成文学賞を受賞。
2007年「八日目の蝉」で中央公論文芸賞をいずれも受賞
2009年ミュージシャン河野丈洋と再婚。習い事は英会話とボクシング。趣味は旅行で30ヶ国以上に行った。
その他、「水曜日の神さま」「森に眠る魚」「何も持たず存在するということ」「マザコン」「予定日はジミーペイジ」「恋をしよう。夢をみよう。旅にでよう。 」「私たちには物語がある 」「 愛がなんだ 」「 ひそやかな花園 」「 よなかの散歩園 」「 さがしもの 」「 彼女のこんだて帖 」「 かなたの子 」「 幾千の夜、昨日の月 」「 口紅のとき 」「 曽根崎心中 」「 紙の月 それもまたちいさな光
その他、穂村弘との共著「 異性





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