hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

角田光代「八日目の蝉」を読む

2009年02月23日 | 読書2

角田光代著「八日目の蝉」2007年3月、中央公論新社発行を読んだ。

若い女性が不倫相手の家に忍び込み、泣いていた赤ん坊を思わず抱き上げる。柔らかく、あたたかく、か弱いが、強さも持った腕の中の赤ん坊に澄んだ目でじっと見つめられ、ニッコリと微笑まれたら、そして女性は子供を生めなくなった身体だったら、貴女は?

ヒロインの希和子は、薫と名づけたその子を抱いて逃亡生活を始める。アパートも借りられず、親切にすがってようやく住めることとなった場所も、追っ手の影を感じ次々と移動しなければならない。その中でこの子だけはと本当の母親になっていく希和子。そして、いつのまにか、貴女は赤ん坊を誘拐した希和子になって、「逃げて!」とハラハラすることになる。

この小説は、2005年11月から2006年7月、読売新聞夕刊に掲載された角田さん初の新聞小説で、中央公論文芸賞を受賞した。

角田光代さんは、1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部卒。1990年「幸福な遊戯」で海燕新人文学賞、2005年「対岸の彼女」で直木賞、2007年「八日目の蝉」で中央公論文芸賞を受賞。なお、2006年芥川賞を受賞した伊藤たかみさんと6年間の同棲を経て2005年春に婚姻届を出した。



私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)

この小説の登場人物は皆が何か大切なものを一つ失ってもがいていて、周りの人に互いにつらくあたってしまう。しかし、いつもの角田さんの小説のように、ここにも、女同士の友情、壊れかけた家族、逃げの男性、娘と母親との確執があり、そして、最後にかなたの許しが見える。

4年もの逃亡生活の末、ついに、追っ手に捕まりもう最後だというときに、わが子、薫と引き離された希和子が叫ぶ。
「その子は、・・・」
なかなか思い出せなかったこの「・・・」を、大人になった薫が思い出す場面が最後の方にあるのだが、その言葉「・・・」は、・・・秘密!!

多分、角田さんには子供はいないと思うのだが、なんでこんな言葉が紡ぎだせるのだろうか。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする