hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

イアン・マキューアン『初夜』を読む

2010年02月26日 | 読書2
イアン・マキューアン著、村松潔訳『初夜』2009年11月、新潮社発行を読んだ。

表紙裏にはこうある。
性の解放が叫ばれる直前の、1962年英国。歴史学者を目指すエドワードと若きバイオリニストのフローレンスは、結婚式をつつがなく終え、風光明媚なチェジル・ビーチ沿いのホテルにチェックインする。知り合って1年と少し。愛しあう二人は、まだベッドをともにしたことがなかった。初夜の興奮と歓喜。そしてこみ上げる不安―。二人の運命を決定的に変えた一夜の一部始終を、細密画のような鮮明さで描き出す、優美で残酷な、異色の恋愛小説。


確かに異色だ。本書の約半分は延々と続く初夜の描写で、残りがところどころで思い出す出会ってからの1年あまりの出来事なのだから。



私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)

現代から見れば、あまりにも生硬で堅苦しい二人の初夜をこれほど詳細に書かれても、読むのがうっとうしくなる。確かに、大なり小なり、怯える女性の気持ちもわかるが、多くの場合は時間が解決するのだろう。しかし、これほどまでに芯が拒絶的だと、男性はやってられないと思ってしまう。

これまで我慢に我慢を重ね、ただただ焦る男性と、受入れなければと思うが恐怖する女性の心と動作が微に入り細に入り執拗に描写される。男女の心と身体のすれ違いがテーマのように見えるが、それは題材に過ぎないのではなかろうか。二人の、とくに女性の繊細な心理と身体の細かい動きを詳細に描写して見せるのが著者の目的のように思えてしまう。どんな題材でもイアン・マキューアンは粘着質的、神経症的な心理描写に徹してしまうようだ。

原題は、“On Chesil Beach” で、チェジル・ビーチは新婚旅行のホテルの場所。



イアン・マキューアンIan McEwanは、1948年生まれ。イギリスの小説家。シンガポール、北アフリカのトリポリなどで少年時代を過ごす。サセックス大学卒業後、イースト・アングリア大学(UEA)の創作コース修士号取得。修士論文として書かれた短篇が短篇集『最初の恋、最後の儀式』First Love, Last Rites (1975)に収録され、サマセット・モーム賞を受賞。最初の長編『セメント・ガーデン』(1978)と『異邦人たちの慰め』(1981)はブッカー賞候補。『時間のなかの子供』はフェミナ賞外国語小説部門受賞。その他、『イノセント』(1989)、『黒い犬』(1992)、『愛の続き』(1997 )。『アムステルダム 』Amsterdam (1998)で98年度のブッカー賞、『贖罪』(2001)は全米批評家協会賞を受賞。その他、『土曜日』(2005)、本書(2007)など。




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