hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

池内了「宇宙論のすべて」を読む

2007年04月08日 | 読書

明日から1週間、観光兼ロングステイ下見で沖縄へ行きます。写真の保存のためにもパソコンは持参するものの、ネット環境は不明なので、ブログはお休みするかもしれません。
自ら好きでやっていることであり、それほど時間をとられるわけではないが、ブログに追い立てられているようで、義務化していてぐーたらできない。奥様には、「ブログのための旅行なの?」と言われるしまつ。正直、沖縄のホテルでネットがつながらなければ良いのにと思う気持ちもある。今時そんなことないか?


宇宙論に関する研究家で科学倫理などについての発言も多い池内了総合研究大学院教授の「宇宙論のすべて」(新書館発行)を読んだ。
天動説から始まる宇宙論の歴史、ビッグバンから惑星探査まで、最新宇宙論を分かりやすい文章で解説している。おまけにニュートン力学から素粒子の標準理論までの物理解説、ギリシャ時代からの科学者の紹介まであるが、約250ページの本に要領良くまとめてある。各テーマがほぼ2から3ページにまとめてあり、集中力を切らさずに読めるし、興味あるところだけ読んでも理解しやすい。

最近、宇宙論に関するレオナルド・サスキンドの「宇宙のランドスケープ」と、小山勝二他「量子の世界」を読んだが、この本が幅広い内容を要領よくまとめてあり、肝心な点は落としていない。入門書として最適だと思う。

月、恒星までの距離、宇宙の大きさの計り方の進歩、ビッグバン、インフレーション宇宙などもわずかな文章で解説してあり、理解しやすい。
私が現代の宇宙論に疑問を持っているのは、「人間原理」と「ダークエネルギー」である。

人間原理
自然界の定数の値が奇跡的な確率で人間が存在できる値になっていることの解釈として、人間原理の宇宙論というものがある。このことをサスキンドの「宇宙のランドスケープ」では、延々と述べていた。この本では、この宇宙が結果的に人間を生む宇宙となっていると解釈する立場を、「弱い人間原理」とし、一方、人間によって認識されない限り宇宙は存在しても知られないことを強調し、この宇宙は、私たち人間によって認識されているのだから、人間を生み出す必然性があり、それだから、定数はこのような値になっていると主張するのが、「強い人間原理」であると、明快に解説している。
そして、池内さんは「この宇宙は、私たちごときまだ知的レベルの低い未発達の人間を生むことを目的としているとは、とても思えない」として、「人間原理の宇宙論は私たちがこの宇宙のかえがえない子供であることを自覚するだけに留めた方がよいだろう」と述べている。
科学を神に引き渡すような「強い人間原理」にはどうしても抵抗があった私も納得である。

ダークエネルギー
補遺Ⅰとして一節が起こされている。「宇宙は平坦で永遠に膨張を続けるという観測結果に合わせるために、宇宙に存在する物質(=エネルギー)は、バリオンが4%、ダークマターが24%で、ダークエネルギーという何もわかっていないものが72%とならざるを得ない。私たちは宇宙を構成する物質についてまだよくわかっていないか、何か大きな勘違いをしているのか、大きな問題が残っている」と現状を述べている。
私にも、ダークエネルギーは正体が分からないで、値を合わせるための未定係数のようなものだということがようやくはっきりと理解できた。


コメント
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