八幡町をゆく(23) 鬼子母神(下村の伝承)
子どもが消えたのは、五人目でした。
村人は、「きっと鬼だ。神出鬼没の鬼が子どもをさらったに違いない」とささやきあいました。
北風の吹く夜、村はずれの水車小屋の近くに美しい女がさびしげに立っていました。
若者は、その女の後をついていきました。立派な家に着き、風呂にも入れてもらって、気持ちがよくなり眠りこんでしまいました。
寒気を感じて目を覚ますと、山の中の肥の中にいたんです。こんなことが幾度か続きました。
子どもは、依然として帰ってきません。
「これは、あの鬼の仕業に違いない」と村の修験者が、夜、鬼を待ちました。鬼は出てきません。
ただ、美しい女が現れたのです。「鬼が女に化けているに違いない」と女の後をつけました。
女は、上西条、中西条の村を越え、城山(じょやま)に消えました。
修験者は、城山にひそんでいました。
夜半、女の足音と子どものすすり泣きが聞こえてきました。飛び出したですが、誰の姿もありません。
「鬼子母神(きしぼじん)が子どもを食うという話を聞いたことがあります。
鬼子母神がこの山に住んでいるのではないか」と修験者は考えました。
修験者は、村の衆と相談して村の寺(萬福寺)の一角に鬼子母神を祀る祠を造りました。
その後、子どもたちはさらわれなくなったと言います。
*『ふるさとの民話』(加古川青年会議所)参照
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