『トロイからの落人』 FUGITIVES FROM TROY 第7章 築砦 ５８

　『打ち合わせを終わる。あ～あ、リナウス、３人一組のトレーニングはどんな具合だ？者どもしっかりやっているか』
　『え～え、しっかり取り組んでいます。一人のほうは二人組にはかなわないようです。腕のたつ奴は、一人でも二人組と渡り合っています』
　『二人組にアドバイスだ。相手が強くても二人で打ち掛かれば、一人のほうに必ず隙が生じてくる。後ろからだろうが、どこからでもいい、隙を見つけて打ち掛かれと言ってくれ』
　パリヌルスは、海賊と干戈を交えることを四人に簡単に通達し要務を伝えた。
　彼は空を仰いだ。陽は思った位置より高みにある。今日は彼にとって長い一日となりつつあった。彼は、一人となって、１番船が作っている日陰に腰を下ろした。人気を避け、足を組んで座した。雑念を払い、軽く目を閉じた。心情は、明鏡止水の域であり、孤高の状態である。敵との交戦の情景を順を追って思い起こした。浮かぶイメージ映像は鮮明であった。宙に舞い飛ぶ松明、目指す浜に向かって波を割る船、上陸、撃剣の響き、刃うちの火花、飛び交う怒声、闘いの修羅場である。２対１作戦の展開が強敵を征していく、敵も強い、強さをあなどれない。怒号、絶叫が耳を打つ、走り回る敵味方の強者たち。
　彼の心情は、その場に立っているのは我々であることを願った。暗闇の浜、ところどころにある燃え尽きようとしているかがり火、闇に等しい戦場を眺めていた。
　戦闘のイメージを描き終えた。握った手の内側はじっとりと汗ばんでいた。