『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  504

2015-04-09 08:04:38 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 浜小屋の中はまだ何も見えない真っ暗闇である。スダヌスは、隣に寝ているイリオネスに声をかけてみた。
 『イリオネス、目が覚めているのか?』
 『おう、目は覚めている』
 『起きるか』
 『おう、いいだろう』
 ギアスは、二人のささやきを耳にした。暗い小屋の中、戸口近くに寝ていたギアスは起き上がった。手探りで戸口の戸を開けて外へ出た。足をヘルメス艇のほうへと運ぶ、ヘルメスの張り番の二人に声をかけて、異常のなかったことを確かめた。
 『よし!交替しろ。お前らも少々眠るか、それとも起きるか勝手にしていい』
 『判りました』
 『替わりが来るまで俺がここにいる』
 間をおかずに交替の者が姿を見せる。彼は朝行事に海辺へ歩を運んだ。海に身を浸している者たちを目にする、イリオネスが声をかけてくる。
 『おう、ギアス、おはよう』
 『あ!おはようございます。軍団長も早い目覚めですね』
 『おう、お前も早いではないか、身を浸せ。朝行事やりながら打ち合わせだ。ほどなく空と海の境界が見えてくる。星が消えるころには出発する。出発のメンバーは統領と俺、スダヌス、クリテス、イデオスの5人だ。朝食は道中で食べる。山行の荷はスダヌスが準備している。お前に頼みたいのは、今日の朝食から、都合4日分のパンを日にち別に袋に詰めてくれ。これを統領以下の4人が持つ。いいな』
 『判りました』
 二人は話しながら東の方を眺めた。空と海を分ける水平線が見えてきている、薄明のおとずれを見た。一同が朝行事を終えて円陣を組む、円陣の真ん中にイリオネスが立っている。彼は一同に山行の行動予定を話す、浜に残る者たちはギアスの指示に従うようにと告げて話を結んだ。一同からは『おう!』のひと声があがった。
 山行の一行は足ごしらえを終えている。ギアスが荷を整えて一向に手渡す、陽が水平線から顔を出す、一行は一歩を踏み出す、浜に残る者らが彼らを見送った。
 スダヌスが先頭を行く、アヱネアス、イリオネスと続く、しんがりはクリテス、イデオスは、クリテスの前を歩いた。
 彼らは言葉を交わさない、無言で粛々とした足運びで浜から遠ざかって行った。


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